全身炎症リスク低減クリーニングとは?
2026年9月25日
ハーバード大学、カリフォルニア大学、そしてNatureグループなどの世界的研究機関の論文では、歯周病が慢性的な炎症反応を介して、心血管疾患、糖尿病、代謝異常、免疫調節異常などと関連する可能性が示されています。
当院が提供する全身炎症リスク低減クリーニングは、通常、みなさんが想像されるような、一般的な歯石除去や審美目的のクリーニングではありません。
私たちは、歯周病を口腔内の局所感染ではなく、全身に影響しうる慢性炎症性疾患として捉えているのです。
この考え方は、決して我々だけの、独自の思いつきではなく、グローバルスタンダードな考えの先駆けとなるものです。
歯周病によって生じる炎症性サイトカインや細菌由来成分は、歯ぐきの中に留まらず血流へと入って、全身の炎症レベルに影響を及ぼします。
この視点は、現在の国際的な歯周病研究における重要な共通認識なのです。
歯周病の本質はバイオフィルムが生む慢性炎症である

歯周病が治りにくい最大の理由は、歯周病菌が形成するバイオフィルムの存在です。
これは単なる歯垢ではなく、細菌同士が協調し合い、外部からの刺激や抗菌作用に強く抵抗する高度な微生物構造体です。
Frontiers in Physiology や Nature Group のレビュー論文では、歯周病菌そのものよりも、バイオフィルムが引き起こす持続的な炎症反応こそが歯槽骨吸収と組織破壊の本体であると指摘しています。
重要なのは、菌をゼロにすることではなく、炎症を生み続ける環境を断ち切ることにあります。
当院のクリーニングは、この一点を中心に設計されています。
当院が「◯mm基準」を採用しない理由

歯周病治療では、一般的に歯周ポケットが何mm以上かが判断基準として用いられます。
しかし、ご存知でしょうか。歯周ポケットの数値は、測定圧や歯肉の炎症状態によって容易に変動するのです。それでは、測定する人によって、測定値にバラツキがでてしまいます。ある程度の目安にはなりますが、この数字はあくまで目安に過ぎないと考えています。
一方、レントゲン写真で確認される歯槽骨吸収は、その部位が長期間にわたり炎症にさらされてきた結果を示す、極めて重要な情報です。この場合、測定値のバラツキは起こりえません。ただし、レントゲン写真を診査する診断力は必要となります。つまり、診断力のないドクターと、診断力のあるドクターでは診断力の差がでることはあります。
当院では、歯列全体を俯瞰して同一口腔内で相対比較を行い、歯槽骨吸収が進んでいる部位を、全身炎症の観点から優先的に介入すべき炎症の温床と捉えています。
これは、数値に支配された治療ではなく、その方固有の炎症履歴を読み解く医療になるのです。
全身炎症リスク低減クリーニング・4つの設計

① 原因を断つ:徹底した歯石除去
歯石はバイオフィルムの足場であり、慢性炎症を維持する最大の因子となります。
当院では、この歯石除去を単なる前処置ではなく、炎症負荷を下げるための基盤治療であると考えています。
なぜなら、歯石が残ったままでは、どれほど高度な治療を追加しても炎症は再燃するです。
② ジェット水流による歯周ポケット洗浄
次に行うのが、ジェット水流による歯周ポケット洗浄です。
これは汚れを流すためではなく、バイオフィルム構造そのものを物理的に破壊するための工程となります。
近年の国際論文では、バイオフィルムの制御には薬剤よりも機械的・物理的介入が不可欠であることが示されています。
③ 環境を整えるポリッシング
歯面を滑沢に仕上げることで、バイオフィルムの再付着速度を抑制します。
これは見た目の問題ではなく、炎症が再発しにくい環境設計です。当院では、最大4種類のペーストを使用して、その方の口腔内の状態にあわせて複数種類を選択するようにしています。
④ 炎症の温床に介入する深部レーザー照射
最後に、歯槽骨吸収が確認される部位、つまり、構造的に細菌が温存されやすい深い歯周ポケットの最深部にレーザーチップを挿入して、レーザー照射を行います。
当院がレーザーに期待しているのは、歯周病を治す特別なものではありません。
目的は明確に、深部に残存しやすい歯周病菌の量を減少させ、慢性炎症の負荷を下げることにあります。
レーザーを主役にしない。
しかし、使うべき場所には確実に使う。
この姿勢こそが、当院のオリジナルとなるのです。
口腔から全身へ ― 医療としてのクリーニング

ハーバード大学やNatureグループの論文が共通して示しているのは、口腔内の慢性炎症が、全身の健康と無関係ではないという事実なのです。
当院の全身炎症リスク低減クリーニングは、この国際的な科学的知見を、日本の臨床現場で実際に機能する形に再構築したものとなります。
それは、歯をきれいにする時間ではなく、全身の炎症リスクを見直すための医療的介入です。
通常のクリーニングは、時間をかければ、患者さん自身が汚れをとることはできると思います。
なぜなら、毎日、歯磨きをしているから、歯磨き自体の方法は冷静に考えると、みなさん知っているわけです。一般的なクリーニングは美容の延長性にあると思います。
当院では、患者さん自身が行うことのできない部分のケアをすることにより、身体の炎症を減らして、本質的な健康に導く治療を行っています。
コラムはウエスト歯科クリニックと玉川中央歯科クリニックで、それぞれ異なる内容を掲載しています。ぜひ、もう一方のコラムもあわせてご覧ください。
引用・参考論文(代表例)
- Bui FQ, et al.
Periodontal Inflammation and Systemic Diseases: An Overview.
Frontiers in Physiology.
― 歯周炎が慢性炎症を介して全身疾患と関連する機序を総合的に整理したレビュー - Sanz M, et al.
Periodontitis and cardiovascular diseases: Consensus report.
Journal of Clinical Periodontology.
― 歯周病と心血管疾患の関連についての国際コンセンサス - British Dental Journal(Nature Group)
The interrelationship between periodontal disease and systemic conditions.
― 歯周病と全身疾患の双方向的関係を示した総説 - Harvard Medical School 関連研究
― 慢性炎症としての歯周病と代謝・免疫系への影響を示した疫学・基礎研究群
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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