マスクをすると、虫歯になりやすい
2026年9月30日
結論 をいいます
マスクは呼吸の仕方を変えて、口の健康にも影響を与えます
マスクを長時間着けると、鼻呼吸が妨げられて口呼吸になりやすくなります。
その結果、口の中が乾いて、唾液が減少していきます。実は、唾液には細菌を洗い流したり、歯の修復を助けたりする重要な働きがあるため、減ってしまうと虫歯のリスクが高まるのです。つまりマスクをすると虫歯になりやすいというのは、誇張ではなく、生理学的にも裏づけられたことなのです。
鼻呼吸と口呼吸

私たちの体は、本来、鼻で呼吸するようにできています。
鼻は空気を温め、湿らせ、細菌やほこりを取り除いて肺に送り込むフィルターの役割を果たしています。
これに対して、口呼吸は加湿も除菌もされない乾いた空気を直接取り込むため、口腔内に強い刺激を与えるのです。
鼻が詰まっていたり、呼吸抵抗が高いと、人は無意識のうちに口呼吸へと切り替えます。耳鼻咽喉科や睡眠医学の分野では、アレルギー性鼻炎や鼻中隔湾曲の患者で口呼吸が慢性化することが知られています。この口呼吸が続くと、唾液が蒸発しやすくなり、口の中の環境が急速に悪化していきます。
マスクがもたらす呼吸の変化

マスクは感染症対策に欠かせませんが、呼吸のしやすさには影響します。特にN95マスクなど高性能なものは空気の通過抵抗が高くて、鼻呼吸時に息苦しさを感じやすいと報告されています。
シンガポール国立大学のZhuら(2014)は、医療従事者を対象にマスク装着時の鼻抵抗を測定し、N95使用時に呼吸抵抗が上昇することを確認しました。
藤田医科大学の研究(Fujitaら, 2019)でも、加湿機能のあるマスクでは呼吸が快適になる一方、一般的なマスクでは鼻呼吸がしにくくなる傾向が示されています。
これらの研究は、マスクそのものが鼻呼吸を物理的に妨げるのではなく、呼吸の負担感から、口呼吸を誘発する条件をつくることを示しています。
口呼吸が引き起こす口腔乾燥

口呼吸をすると、空気が直接口腔内に流れ込んで、唾液の蒸発が進みます。先ほども述べましたが、鼻呼吸では鼻腔内で加湿、加温された空気が送られますが、口呼吸ではその調整機能が働かず、舌や粘膜が乾いてしまうのです。
唾液は、歯と歯ぐきを守る天然の防御液と言えます。また、自浄作用で細菌を洗い流し、抗菌成分でバランスを保ち、さらに歯の再石灰化を促進する働きもあります。そのため、唾液量が減ると、これらの機能が一気に低下して、虫歯や口臭、歯周病のリスクが高まるのです。
イタリアのBMC Public Health誌(2023年)の研究では、FFP2マスクを長時間着用した群で唾液量の減少と揮発性有機化合物の増加が報告されました。
これは、乾燥によって細菌の活動が高まり、臭い物質や酸が増えていることを示すものになります。
乾燥が虫歯を増やす

口の中が乾くと、まず唾液の再石灰化作用が働かなくなります。通常、唾液に含まれるカルシウムやリン酸が歯の表面を修復していますが、これが途絶えると、歯の表層が酸に溶けやすくなります。
また、自浄作用が低下すると、虫歯の原因となるミュータンス菌やラクトバチルス菌が増殖しやすくなります。
これらの菌は糖を分解して酸を作り出して、歯の表面を溶かしていきます。さらに唾液の緩衝能が低下することで口の中が酸性に傾きやすくなり、虫歯が進行しやすい環境になるのです。
そうなると、乾燥症、例えば、シェーグレン症候群などの患者に虫歯が多いことも、このメカニズムで説明されます。
つまり、マスクによって口呼吸が習慣化すると、同じ方向でリスクが高まるのです。
研究結果と個人差

一方で、すべての研究がマスクが虫歯を増やすと結論づけているわけではありません。
アメリカ・テンプル大学の研究(2022年)では、マスクの長期使用によって唾液量や歯肉の健康に大きな変化は見られませんでした。対象者が若く、口腔清掃状態が良かったことが影響したと考えられます。
つまり、マスクの種類、装着時間、個人の鼻疾患や呼吸習慣、水分摂取や歯磨きの頻度といった複数の要因が重なったときに、初めて虫歯リスクが高まるのです。
予防とケアのポイント

マスクを着ける生活が続く中で、最も大切なのは鼻呼吸を意識することです。
日中は口を閉じ、睡眠時にはマウステープを使って口呼吸を防ぐのも効果的です。
それと、マスクを選ぶ際には、通気性とフィット感のバランスが良く、加湿効果のあるタイプを選ぶとよいでしょう。
また、口腔乾燥を感じたら、こまめに水分をとる、キシリトールガムを噛む、唾液腺マッサージを行うなど、唾液分泌を促す習慣を取り入れることも有効です。
もちろん、歯磨きやデンタルフロスを丁寧に行い、定期的な歯科検診を受けることはとても大切でふ。
結論 として、マスク時代の虫歯対策

マスクは感染症予防のために一定の効果ががあると言われていますが、その影響は呼吸器だけでなく、口腔環境にも及びます。鼻呼吸が妨げられ、口呼吸が続くと、口の中は乾燥して、唾液の守りが弱まります。その結果、細菌が繁殖しやすくなり、虫歯のリスクが高まるのです。
マスクをすると必ず虫歯になるとまでは言えませんが、長時間の着用と乾燥が重なれば、確実にリスクは上昇します。
これからの時代は、感染対策と同時にマスクによる口腔の変化にも注意を払い、鼻呼吸を保ち、唾液を守るケアを習慣化することが求められるのです。
コラムはウエスト歯科クリニックと玉川中央歯科クリニックで、それぞれ異なる内容を掲載しています。ぜひ、もう一方のコラムもあわせてご覧ください。
参考文献
- Fujita Y, et al. The effects of heated humidification to nasopharynx on nasal resistance and breathing pattern. PLOS ONE. 2019.
- Zhu JH, et al. Effects of long-duration wearing of N95 respirator and surgical facemask: a pilot study. National University of Singapore, 2014.
- Roberge RJ, et al. Physiological impact of the N95 filtering facepiece respirator on healthcare workers. Ann Work Expo Health. 2010.
- Temple University. Prolonged mask wearing and oral microbiome stability. Front Cell Infect Microbiol. 2022.
- BMC Public Health. Correlation between different facemasks and oral ecosystem changes. Italy, 2023.
- Kim Y, et al. Oral microbiome of the inner surface of face masks and whole saliva during the COVID-19 pandemic. Front Oral Health. 2023.
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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