インプラントは入れ歯の3倍噛める?噂の真相に迫る
2025年11月21日
インプラントは入れ歯の3倍ときいたのですが、ほんとに噛めますか?最近、患者さんから質問されることですが、実際のところ本当でしょうか?
この言葉を聞くとインパクトは強く、インプラントはこんなにいいものなんだ!と思いがちになります。
ただ、私の見解では、もしかしたら、実際のところは?です。
なぜかと言うと噛めるというのは、何と何を比べているのかが重要なのです。何って、インプラントと入れ歯じゃないか、という声が聞こえてきそうですが、実は勘違いというか、そのあたりにトリックが隠れているのです。
3倍噛める?

3倍噛めるという根拠で有名なのは、総入れ歯、と、インプラントのオーバーデンチャーの比較です。
総入れ歯は、みなさん、ご存知の典型的な大きい入れ歯で、総義歯ともいわれます。
また、インプラントのオーバーデンチャーとは、総入れ歯の下の部分にインプラントを埋め込んで、インプラントでも入れ歯を支える構造になっています。
特徴として、総入れ歯は粘膜という柔らかい組織、歯茎みたいなところに、入れ歯が乗っかるスタイルなので、入れ歯自体が動きやすく、特に下の入れ歯は、動きやすいです。
その問題を解消するインプラントのオーバーデンチャーは、その下顎に2〜4本のインプラントを埋めることでインプラント義歯を安定させるスタイルになっています。
総入れ歯よりもインプラントが追加された分だけ、噛む力や食べやすさが大きく改善します。その改善幅が1.5〜3倍と報告されることがあったことから、3倍といわれるようになりました。
ただ、ここで注目しないといけないのは、このケースの場合インプラントはあくまで入れ歯を支える一つの部品といいますか、追加装置みたいなもので、噛んでいる部分はインプラント義歯の人工歯になります。
通常の顎の骨に埋め込んで、インプラントの上にセラミックなどの歯をいれる、みなさんが通常想像するインプラントとは、別の物と考える必要があります。
3倍の盲点

ある研究によると、総入れ歯からインプラント義歯に替えると、最大咬合力、つまり、噛む力の上限が60〜200%増したそうです。
また、咀嚼効率、平たく言うと実際の食べやすさのようなものは1.5〜3倍程度の改善をしめしたそうです。ただ、改善する幅が大きかったのです。(文献3,4)。
つまり、バラツキですね。なぜ、これだけバラツキがあるのかというと、食べる物や測定方法で数値は変わるものだからです。そのため、必ず3倍というわけではないとお考えください。
通常のインプラント

1本だけの単体のもの、ブリッジ、All-on-4などの固定式インプラントといわれるものは、総入れ歯やインプラント義歯より噛む力は強く、硬い食べ物でも噛みやすくなります(文献6)。
そんたよね。だから、やっぱりインプラントが一番、ではありません。
天然の歯には歯根膜というセンサーであり、クッションのようなものがあり、微妙な力加減や異物感を感じ取る役割を果たしています。
インプラントは、歯根膜がないため、力のコントロールと繊細さでは天然歯と同じ性能があるとはとても言えないのです。(文献7)。
高性能な総入れ歯は、優秀

歯科の教科書には総入れ歯の噛む力は、天然歯の10〜20%、と書かれることがありますが、これはあくまで平均的な数値で、実際には、高性能な新しい総入れ歯の場合や、咬み合わせの精密な調整をした場合、良質な材料と適切な入れ歯の設計をした場合は、みなさんが想像する入れ歯とはかけ離れた、総入れ歯での食べやすさが大きく改善するのです(文献8)。
〇〇は良い、とする基準

研究でよく使われる指標は3つになります。
最大咬合力、咀嚼効率、満足度、それぞれ解説しています。
最大咬合力は、MBFとよばれ、力比べのようなものです。どれだけしっかり噛めるか、というものです。
咀嚼効率はMEといわれ、これは、食品によって数字が大きく変動します。
満足度は、別名でいうと生活の質、よくQOLといわれますが、痛くないとか、外れないとか、話しやすいとかになります。
つまり、単純に3倍だから良いのではなく、実生活での快適さは人によって違いますから、それだけでは、一概には言い切れないのです。(文献9,10)。
3倍は気にせず、選択するならオーダーメイド

総入れ歯より、インプラント義歯は一般的には1.5〜3倍の改善が出ることもある。ただ、安定した数値に差がみられるので、誰にでも恩恵がえられるかは不明です。
固定式インプラントは、力強さでは優れるが、天然歯の繊細さは再現できない。
つまり、あまり強く噛みすぎると、インプラントの周りの骨が吸収する可能性がでてきます。そうなると、インプラント自体の撤去になる可能性が出てきます
よく作られた高性能な総入れ歯は、他の治療法と比較しても十分に満足できる性能をもっています。
結局、何がいいかではなく、自分に何が合っているかということが大切なのです。
つまり、治療とは、顎の骨の状態、全身の健康、清掃能力、費用、メンテナンス、あなたの生活スタイルに合わせて考えるものです。
最後に
一つの基準として、強く噛めるだけでなく、どんな食事を楽しみたいかが治療法選びにとって大切になります。
入れ歯、インプラント、それぞれに長所と短所があります。どちらかだけが優れているわけではないと私は考えています。
あなたに合った方法を見極めるには、歯科医師と一緒に比較検討することが一番の近道です。
そのため、色々な治療をしている歯科医院を選択されるのがいいと思います。
インプラント専門のところだと、インプラント以外の選択肢がありませんから。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
少しでも、みなさんの未来が明るく輝くよう、このコラムを書いています。
統括院長 Dr.Ryo
このコラムは、ウエスト歯科クリニックと玉川中央歯科クリニックでそれぞれ別の内容で掲載されています。知識が深まりますから、両方、ご覧ください。




