自宅でできる、噛み合わせセルフチェック
2025年12月19日
みなさん、こんにちは。Dr.Ryoです。今回のテーマはこちらです。
自宅でできる、噛み合わせセルフチェック
症状がなくても進む、噛み合わせのズレ

私の噛み合わせは悪くないと思う、痛みもないし、食事も普通にできるから大丈夫!
そう考えている人は少なくないと思います。 しかし、実際には、明らかにガタガタした噛み合わせや、顎関節症でなかったとしても、ほぼ全ての人が、噛み合わせのズレを抱えているといえます。
私の経験では、10代の頃は比較的安定している人が多いものの、20代中盤から徐々に左右差が現れ、30代以降では、本質的な良好な噛み合わせ、と言える人はほとんど見当たらないのが現状です。
症状がなくても、実は、将来の認知症や、成人病の予備軍として、噛み合わせのズレが進行しています。
それを確認する第一歩が、自宅でのセルフチェックになります。
ここからは、鏡や手の感覚を使って、誰でも簡単にできる噛み合わせの確認方法をご紹介しています。
噛み合わせの確認方法

鏡で確認、顔の左右差
鏡の前に立ち、自然な表情で顔を観察してみてください。
口を閉じたときに、人中と呼ばれる、唇の中央が鼻の真下にありますか?
顎先が左右にずれていませんか?
眉の高さ、目尻の位置、口角の高さに差がありませんか?
バランスが悪いと感じるのであれば、それは噛み合わせのズレが顔の筋肉、骨格に影響しているサインの可能性があるのです。
他には、笑顔の時、片方の口角だけが高く上がる、歯の見える量が左右で違うといったアンバランスは、片側で噛む習慣や顎の偏位が影響していることが多い証拠となります。
顎の動きを確認、真っ直ぐ開くか?
口を大きく開けてみましょう。
ゆっくりと顎を下に下げたとき、顎がまっすぐ下に動いていますか? または、どちらかにずれたり、S字を描くように揺れたりしてませんか?
問題がなければ、顎はスムーズに上下するはずなのですが、噛み合わせがズレていると、顎の関節にアンバランスな負担がかかり、顎の開閉の途中で軌道がブレることがあるのです。顎を開けるときにカクンと音が鳴る場合もアンバランスなサインです。
舌の位置、安静時の状態
口を閉じてリラックスしたとき、舌の先はどこにありますか?
理想的な位置は、舌先は上顎の前歯の少し後ろ、に軽く触れているのが自然ですが、舌が下の歯に当たったり、口の中で落ちていたりする人は、噛み合わせや呼吸機能に影響が出やすい可能性があるといわれています。
舌の位置は、歯並び、や顎の成長にも大きく関わるため、自宅でできる簡単なチェックとしては、非常におすすめです。
食べ物を粉砕、どちら側で噛むか?
食事中、意識してください。無意識のうちに片側だけで噛んでませんか?
片噛みは、顔の筋肉や骨格の発達にアンバランスな偏りを生んで、顎関節にも負担をかけます。ガムを使って、右だけで5分、左だけで5分 と順番に噛んでみると、どちらかが噛みにくい、疲れやすいと感じることがあると、これは咀嚼のバランスが崩れているサインです。
歯の接触、力を抜いた時
何もしていないとき、歯は上下で触れ合ってますか?
本来なら、安静時には上下の歯の間には1〜2ミリほどの隙間があるのが正常です。常に噛みしめている状態が続くと、顎関節や筋肉に負担がかかり、歪みや痛みの原因になってきます。
日中、少し意識してみて、もし歯が当たっていることが多ければ、無意識の噛みしめの癖があると、考えられます。
姿勢、全身とのつながり
壁に背をつけて立ってみてください。
後頭部、肩甲骨、お尻、かかとが自然に壁につきますか?
頭だけが前に出ているとか、片方の肩だけが上がっているといった姿勢の歪みがあれば、顎の位置や噛み合わせのズレに影響を与えます。
猫背、ストレートネックは顎を後退させて、結果的に、気道を狭めて、噛み合わせに負担をかけます。そのことは、顔の歪みだけでなく、呼吸、身体全身の不調にもつながるため、姿勢は大切なチェックポイントになります。
痛みや音、顎関節のサイン
口を開けたときにカクッと音が鳴る、顎が痛い、朝起きたときに顎がだるいといった症状はありますか?
これがある人は、顎関節に負担がかかっているサインです。軽度でも繰り返すと、将来的に顎関節症へ進行していく可能性があるのです。
科学的エビデンスとは?

Thiesenらのレビュー(2015)では、顔面非対称は単なる審美的問題ではなく、噛み合わせや顎関節の機能的問題と関係していることが示されました【1】。Melnikの研究(1992)では、成人の多くに下顎の左右差が存在して、本人に自覚がなくても歪みが客観的に確認されたと報告されています【2】。
つまり、問題ない、と思っている人の多くが、実際には小さなズレを持っていてそのことが年齢が経過するとともに表面化していくことが明らかになってきます。
最後に

噛み合わせのズレは、痛みや体調不調が出てから気づく人がほとんどだと思います。
しかし、体調不良になるまでに必ず小さなサインがあるはずです。
鏡での観察、顎の動き、舌の位置、食べる時の偏り、姿勢、顎の音、違和感、これらを自宅でチェックするだけで、今まで気づかなかった、噛み合わせのズレを見つけられると思います。
もし、セルフチェックで噛み合わせのズレを感じたら、噛み合わせの専門家に相談することが大切です。
自覚のないうちに、改善させることが、将来の大きなトラブルを防ぐ第一歩となると考えています。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
みなさんにとって、正しい選択ができるよう、情報を公開しています。
このコラムは、ウエスト歯科クリニック、玉川中央歯科クリニックそれぞれに別の内容を掲載しています。
また、youtubeも併せてご覧ください。
チャンネル登録と、高評価していただけると励みになります。
統括院長 Dr.Ryo
参考文献
- Thiesen G, et al. “Facial asymmetry: a current review.” Dental Press J Orthod. 2015.
→ 顔面非対称と不正咬合の関連を整理し、咬合ズレが徐々に歪みを生じさせることを報告。 - Melnik AK. “A cephalometric study of mandibular asymmetry in adults.” Am J Orthod Dentofacial Orthop. 1992.
→ 成人における下顎の左右差を詳細に分析し、自覚のない非対称が広く存在することを示した。 - 日本顎関節学会 顎関節症診療ガイドライン
→ 顎関節症の診断と治療に関する最新の指針をまとめたもの。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。




