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なぜメロンパンを食べると虫歯になるのか

2026年3月31日

こんにちは、ドクターリヨウです。

論文で学ぶシリーズ、今回のテーマはこちらです。

なぜメロンパンを食べると虫歯になるのか

メロンパン、美味しいですよね。香ばしい砂糖の香りとサクサクした食感が好きな人も多いと思います。ただ、私たちの歯の表面では、見えない問題がでてきます。メロンパンに使われる砂糖は、プラークと呼ばれる歯垢の中の細菌にとって繁殖するのに都合の良い、ご飯、となるのです。細菌は糖を代謝して酸を産生することでして、歯の硬いエナメル質を少しずつ溶かしていくのです。これが、う蝕と呼ばれる虫歯の初期となります。

世界保健機関(WHO)は、砂糖の摂取量とう蝕の発症率の間には強い関連があると繰り返し警告しています。また、砂糖の中でも加工食品や飲料に添加された糖は虫歯リスクの大きい要因であるとされ、メロンパンも、それに当てはまるのです。

ステファン曲線が示す酸性の時間

食事や甘いお菓子を食べると、口の中のプラークpHは急降下して、その後、ゆっくりと回復してきます。この変化を、ステファン曲線(Stephan Curve)、と呼びます。。例えば、物を食べた直後にpHが6.5前後から5.0以下まで落ち込んで、もとの中性に戻るまでに20〜40分かかります。エナメル質が溶け出すのはpH5.5付近といわれていますから、酸性状態が続く、この時間に脱灰が進みつづけるのです。

メロンパンは砂糖の結晶が多く、表面が乾いているため、砂糖が歯面につきやすく残留しやすい傾向にあります。そうなると、酸性時間が延び、ステファン曲線の低下部分、つまり酸性の状態が長く続くので、脱灰がおきやすくなります。

プラークは、長時間酸性の状態にあると、唾液の再石灰化が追いつかずに、エナメル質はわずかずつ溶かさせて脱灰するのです。

ミュータンス菌は、酸を生んで、酸に耐え、歯に留まる

ミュータンス菌のイメージ

う蝕の代表的な原因菌は、Streptococcus mutans(ミュータンス菌)です。

ミュータンス菌は三つの性質があり、糖を乳酸などの酸に変える「酸産生能」。酸性環境でも増殖できる「耐酸性」。スクロースから不溶性グルカンという粘着性多糖を作って、歯の表面に強固に付着する「付着能」という性質です。

これらの性質からミュータンス菌は一度歯に住み着けば簡単には離れないで、酸を出し続け、局所的な低pH環境を維持するのです。

メロンパンは、砂糖が豊富な食品ですから、繰り返し食べると、ミュータンス菌のエネルギーになる源が常に補給されますから、ミュータンス菌は代謝を活性化させて、酸を産生しながら、自らが作り出したグルカンの膜で守られた“バイオフィルムを形成します。これは、ものすごく断固に歯に張り付いて、なかなか歯ブラシでは除去しづらいことから、見えないところで脱灰が進んで、小さな穴を開けていくのです。

口腔クリアランス

ただ、虫歯は糖の摂取量だけの問題ではありません。どれだけ長く口腔内に糖が残るかということにも影響するのです。これを専門的には、口腔クリアランスといいます。

例えば、液体や柔らかい果物などの摂取の場合は、唾液で比較的速く残留物を洗い流されますが、乾いたビスケットや粘り気のあるパンは歯面につきやすいわけです。さらに、メロンパンの表層は、微細な糖結晶が歯の溝や歯の間に入り込んで、唾液でもなかなか取り除くことが困難です。そうなると、プラーク中の酸性状態が長引いて、再石灰化が追いつかなくなります。

日本の歯科研究でも、粘着性の高い食品ほどプラークpHが長時間低下したままになると言われており、つまり、糖が多いのが問題ではなく、歯にどどまる時間が長いことが問題であるといえるのです。

デンプンと糖

メロンパンには砂糖以外にも、小麦粉由来のデンプンが含まれるています。デンプンは唾液中のアミラーゼによって徐々に分解されて、最終的には麦芽糖やグルコースと形をかえてミュータンス細菌の原料になるのです。

つまり、メロンパンを食べると、砂糖がpHを低下させて、その後デンプンの分解による麦芽糖、グルコースが加わって、酸の供給がずっと続くのです。そのため、プラークの酸性状態は長時間つづくことから、脱灰が進行しやすくなるわけです。

だらだら食べ、は危険?!

だらだら食べ続ける男性

スウェーデンのヴィペホルム研究では、糖の摂取頻度がう蝕の発症率を左右することを示しています。つまり、1日の糖の摂取量が同じでも、間食を細かく分けて摂ると、虫歯の進行が著しいということです。

メロンパンを少しずつ長時間食べるとか、甘い飲み物と一緒にゆっくりたべると、口の中は常に酸性状態になるので、歯の再石灰化は追いつかなくなるのです。

現代食では、砂糖入りコーヒーや菓子パンを少量ずつ食べることが日常的であり、この習慣が、虫歯の進行をすすめているといえます。

酸と脱灰の相互作用

近年、酸の拡散やエナメル質の溶解を数学的に検証する試みがでてきています。拡散反応方程式を用いると、酸の濃度勾配とミネラルの溶出速度が密接に関係しています。つまり、酸が歯表面から深部に浸透して、ミネラルが失われる速度が臨界値を超えると、構造的な欠損が生じて、う蝕が進展するのです。

これらの理論的研究は、糖摂取後に起こる酸性時間、拡散速度、再石灰化の限界、などを定量的に説明して、臨床的観察を裏付けているのです。つまり、科学的証拠 を数理的にも示しているといえます。

日本人の食習慣と現代的課題

パンを食べる女性

日本は、昔に比べて、菓子パンの消費が増えて、子どもの間食としても一般化しています。国内の疫学調査では、糖の摂取量が高いほどう蝕経験歯数(DMFT指数)が増加すると報告されています。例えば、朝食代わりに菓子パンを摂ると、糖とデンプンが集中して供給されて、唾液分泌が少ない時間帯のために、虫歯になるリスクがさらに高まるのです。

ちなみに、WHOは、自由糖を1日の総エネルギー摂取の5%未満に抑えることを推奨しています。これは肥満防止策ではなく、虫歯予防の目的があるのです。

まとめると

メロンパン

間違えないでいただきたいのは、メロンパンを食べることは、悪いわけではありません。問題は、食べ方とその後のケアが重要というわけです。食後に水を飲んで、口の中の糖分を洗い流すとか、だらだら食べないで短時間で摂取を終えるとか、このような工夫で、酸性時間を短縮して、再石灰化を促進することができるのです。

どのようなメカニズムで虫歯になるのかを知ることが、歯を守る第一歩になるのです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

敵を知り、己を知る。という言葉を祖父に教えられましたが、まさに、その通りだと考えています。

砂糖は、味方にも敵にもなりますから、上手に付き合っていくことが大切なのです。

統括院長 Dr.Ryo

コラムは ウエスト歯科クリニック玉川中央歯科クリニック で、それぞれ異なる内容を掲載しています。ぜひ、もう一方のコラムもあわせてご覧ください。

参考文献(引用一覧)

  1. Moynihan, P. et al. Sugars and dental caries: Evidence for setting a recommended threshold for intake. J Dent Res (2023). Elsevier.
  2. World Health Organization. Sugars and Dental Caries: WHO Technical Note. Geneva: WHO; May 2025.
  3. Fejerskov, O., Kidd, E. Dental Caries: The Disease and Its Clinical Management. 3rd Ed. Wiley-Blackwell, 2015.
  4. Stephan, R. M. The Stephan Curve revisited. J Oral Biosci 2013;55(1):2–7.
  5. Ten Cate, J. M. Developments in dental plaque pH modelling. J Dent Res 2004;83(5):357–362.
  6. Takahashi, N., Nyvad, B. Ecological approach to dental caries prevention: the concept of the caries balance. J Dent Res 2011;90(7):794–802.
  7. Matsukubo, T. et al. Effect of foods on pH change in human dental plaque and individual differences. J Dent Health 1982;32(4):315–322.
  8. A. C. Mutlu et al. A mathematical model for the progression of dental caries. arXiv preprint, 2025.
  9. S. V. Stankiewicz et al. Perturbation method to model enamel caries progress. arXiv preprint, 2007.
  10. Vipeholm Dental Caries Study Group. The Vipeholm experiments. Acta Odontologica Scandinavica, 1954.
  11. WHO. Sugars and Dental Caries – Fact Sheet. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/sugars-and-dental-caries

この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
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