アメリカ人と日本人、歯周病になるのは?
2026年6月16日
結論をいいます。
統計で見れば、日本人のほうが歯周病になりやすいのです。
2023年のWHOの発表では、アメリカでは成人の約42%が中等度以上の歯周病を持つのに対し、日本では55〜60%と示されています。
どちらの国も清潔を重んじて、歯科医療の水準も高いのですが、それでもこのような差が出るのは、生活習慣というよりも文化の違いにあると思われます。
アメリカでは、歯は社会的なステータスとして扱われるのに対して、日本では、歯は守るものという位置付けです。
このアピール語する文化と、我慢や辛抱する文化の違いが、歯ぐきの健康を左右していると考えています。
1.はじめに

虫歯が砂糖などの甘さとの戦いと定義するなら、歯周病は日常生活で習慣との戦いといえると思います。
歯周病は、細菌による感染症ですが、食事、ストレス、生活のリズムなどの、生活習慣が影響します。
アメリカと日本、どちらも基本的には衛生意識は高いのですが、口の中だけに絞ってみると、向き合い方には決定的な違いがあるのです。
2.アメリカでは、

アメリカでは、歯は自己管理の証、信頼の象徴というイメージです。
白く、歯並びが良く、整った歯は、清潔感や成功を示す社会的なアピールサインとされています。
そのため、定期的な歯科受診が文化として日本よりも根づいています。
アメリカ歯周病学会(AAP)は、半年ごとのクリーニングを標準とし、歯科衛生士による歯石除去などのスケーリングが一般的に行われいます。
2018年の国民健康栄養調査によると、成人の約65%が過去1年以内に歯のクリーニングを受けており、これは日本のおよそ2倍にあたります(厚労省, 2023)。
国民皆保険制度がなく、医療費が高い国だからこそ、「予防にお金をかける」という意識が強いのです。
歯を守ることは、社会的信頼を守る行為でもあるわけです。
3.日本では、

日本人は几帳面で清潔好きですが、歯に関してはどこか控えめです。
今だに、歯医者は、痛くなってから行くところという考え方が今も根強いのではないでしょうか。
日本歯周病学会(2022)の調査では、35歳以上の約6割が歯周ポケット4mm以上の炎症を抱えており、重度の歯周炎は17%に達しています。
また、日本の保険制度は治療には手厚い制度設計になっていますが、予防には弱い傾向がまだまだあります。
「悪くなってから行ったほうが治療費が安い」という構造が、人々の受診を遅らせていると考えられます。
さらに、口の話題を人前ですることも少ない傾向があります。
「歯ぐきが腫れた」「口臭が気になる」といった話は、ビジネスや家庭でもタブー視されがちといえます。
こうした、あまり語らない沈黙の文化が、歯周病を進行させているのです。
4.食と生活

アメリカと日本の食文化の差も、歯ぐきに影響を与えます。
アメリカの食事は、肉やナッツなど噛み応えのあるものが多く、食材を噛むことで血流が促され、歯ぐきが自然に鍛えられます。
それに対して、日本の現代食は柔らかく、糖質が多いものが多いのです。
例えば、白米、うどん、パン、スイーツなどの、柔らかい食べ物が増えて、そうなると、噛む回数が減ってしまうわけです。
その結果、唾液の分泌が減り、抗菌作用も弱まり、歯周病菌が活動しやすくなります。
さらに、間食や、だらだら食べる傾向が日本は強いために、口の中が長時間酸性状態にさらされる傾向が高くなります。
結果的に、アメリカの硬い食べ物は歯ぐきを鍛え、日本のやわらかい食べ物は歯ぐきを甘やかしているのです。
5.ストレスと歯ぎしり

歯周病を悪化させるのは、細菌だけではなく、ストレスや歯ぎしり、食いしばりも大きな要因となります。
。アメリカでは、ストレスは管理するものという考え方が比較的、浸透しています。
つまり、カウンセリングやメンタルケアが一般的であり、心の不調を話すことに抵抗がありません。
日本では、ストレスは耐えるものとされ、長時間労働や責任感の強さが、無意識の食いしばりや歯ぎしりを生み出すのです。
2021年の日本歯科医師会の調査では、職業ストレスが高い人ほど歯周炎が悪化する傾向があります。
特に中年男性でその傾向は顕著です。
つまり、日本の頑張りすぎる文化が、歯ぐきを痛めることを助長しているのです。
6.教育と家庭

アメリカでは、歯のケアは自己管理の一部であり、小学校ではフロスの使い方を学び、子どもに歯は自分で守るものと教えます。
フロス使用率は80%(ADA, 2022)に達すると報告させています。
それに対して日本では約25%(日本歯科医師会, 2023)であり、歯間ケアの習慣そのものが、大きく異なります。
また、アメリカでは家族で同じ歯科医院に通うことが多く、家庭ぐるみで歯を守る文化があります。
日本では、歯科は個人の医療行為であり、家族単位での健康管理はまだまだ少ないといえます。
7.データで比較

アメリカ(NHANES, 2018)では、成人の42%が中等度以上の歯周病です。高齢者では70%に達するが、早期治療率が高く歯を失うのは減少傾向にあります。
日本(厚労省・日本歯周病学会, 2022)では、成人の55〜60%が歯周炎を持ち、40〜60代では重症化率が高くなります。治療率は上がっているが、再発率も高い傾向にあります。
WHO(2023)は、日本を先進国の中でも歯周病有病率が最も高い国の一つとしている。
8.結論
日本人が歯周病になりやすいのは、不衛生だからではなく、真面目で色々な面で優しすぎるからなのです。
アメリカ人は歯を自分の社会的責任として守り、日本人は歯を自分の問題として黙って、痛みに耐えて解決しようとする。
語って防ぐ文化”と、我慢して守る文化”。
日本の歯ぐきの炎症は、社会のシステムの問題でもあるともいえるのです。
自分の身体を語り、皆んなと共有し、気遣うこと、それが、日本人が歯周病から自由になれる最初の一歩になると思います。
コラムは ウエスト歯科クリニック と 玉川中央歯科クリニック で、それぞれ異なる内容を掲載しています。ぜひ、もう一方のコラムもあわせてご覧ください。
参考文献(引用一覧)
- American Academy of Periodontology (AAP). Comprehensive Classification of Periodontal Diseases, 2018.
- Centers for Disease Control and Prevention (CDC). NHANES Periodontal Disease Data, 2018.
- World Health Organization. Global Oral Health Status Report, 2023.
- Japanese Society of Periodontology. National Survey on Periodontal Disease, 2022.
- Ministry of Health, Labour and Welfare (Japan). Survey of Dental Diseases, 2023.
- American Dental Association (ADA). Flossing Habits and Periodontal Health Report, 2022.
- Japan Dental Association. Oral Hygiene and Stress Correlation Study, 2021.
- Petersen, P. E. The global burden of periodontal disease: a public health challenge. J Clin Periodontol, 2019.
- Sanz, M. et al. Periodontitis and systemic health: Consensus report. J Clin Periodontol, 2020.
- Takahashi, N., Nyvad, B. Ecological approach to periodontal disease prevention. J Oral Microbiol, 2021.
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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