歯周病が進行していると、身長は低くなる?!
2026年9月7日
実は、歯ぐきの炎症”が、体の成長にブレーキをかける。

結論をいいます。歯ぐきの炎症は、成長ホルモンの働きを止めるのです。
歯周病が進むと、身長の伸びが遅れるという話を聞いたら驚くかもしれませんね。
しかし、近年の研究では口の中の炎症が、成長ホルモンを抑えて、骨の発達を妨げるという事実が明らかになってきています。
つまり、歯周病は単なる歯ぐきの病気ではなく、全身の成長を左右する慢性炎症なわけです。
歯ぐきで起きている炎症が、静かに体のエネルギーやホルモンのバランスを乱していきます。
歯周病は、口だけの病気ではありません

歯周病は、歯を支える骨や歯ぐきが細菌感染を受けて、慢性的に炎症を起こす病気になります。
歯ぐきの腫れや出血はその初期サインになりますが、痛みが少ないため気づかないまま進行してしまうのです。
問題は、炎症が口の中にとどまらないことです。
炎症部位からIL-6などの炎症物質が血液に流れ込み、全身の細胞やホルモンの働きに影響を与えます。
この反応が続くと、免疫や代謝が乱れて、体の成長を促進させることに障害がでてきてしまうのです。
炎症は、成長ホルモンを止める

身長を伸ばす主役は、成長ホルモン(GH)と、それに反応して作られる「IGF-1(インスリン様成長因子)」といわれています。
これらは脳と肝臓から分泌されて、骨を伸ばして、筋肉を育てる重要なホルモンとなります。
ところが、体内に炎症があると、これらのホルモンの働きが鈍くなってきます。
その結果、炎症性物質が成長ホルモンの受け皿をブロックし、IGF-1の分泌を減らしてしまうのです。
ブラジルの研究(Peres et al., 2017)では、歯周病が進行している若者ほど血中IGF-1濃度が低いことが確認されました。
つまり、歯ぐきの炎症が、成長の信号を遮断しているといえるのです。
歯ぐきの炎症は、骨の成長を妨げる

骨は常に、壊す破骨細胞と、作る骨芽細胞とのバランスで保たれています。
しかし、歯周病が続くとこのバランスが崩れて、骨を壊す側が優勢になるのです。
その結果、歯を支える骨だけでなく、体全体の骨代謝にも悪影響が及びます。
骨の新陳代謝が滞れば、成長期の子どもでは骨の伸びが遅れて、結果として身長の伸びも鈍くなるのです。
2018年のAgarwalらは、歯ぐきの炎症を持つ児童では、骨の伸びる部分の働きが弱まり、発育の遅れがみられることを報告しています。
この結果は、小さな炎症が、体全体の骨の再生力にブレーキをかけてしまうことを示しているのです。
子どもは、身長の差として現れる
実際に、歯ぐきの炎症が強い子どもは、身長や体重が低い傾向にあります。
インドで行われた6〜12歳の学童調査では、中等度以上の歯肉炎を持つ子どもは平均で1.5cm身長が低いという結果が出ています。
2020年のブラジルの研究(Silva et al., )では、歯周炎のある子どもは同年齢の平均より身長・体重ともに低くて、血液中のIGF-1も少ないことが分かりました。
研究者たちは、歯ぐきの炎症が、体のエネルギーを奪って、成長の余力を減らしている、と指摘しています。
大人も無関係ではない
成長期を過ぎても、成長ホルモンは代謝や筋肉維持、骨密度に関わってきます。
そのため、歯周病の影響は「老化」や「代謝の衰え」として現れます。
アメリカの研究(Sharma et al., 2019)では、重度の歯周病患者は健康な人より血中IGF-1濃度が低く、同時に骨密度も低下していました。
つまり、歯周病は成長を止めるだけでなく、老化を早める炎症でもあるともいえます。
炎症が続けば、筋肉は減り、脂肪が増えて、代謝が落ちていく。それはまさに、体が若さを維持できない状態なわけです。
炎症が無くなれば、成長は再び動き出す

ただし、歯周病を治療すると、体の中のホルモンバランスは回復します。
2021年の日本の研究(Yamazaki et al.,)では、歯周治療を受けた患者の血中IGF-1濃度が治療後に有意に上昇しました。
また、このケースでは炎症が減ったことで筋肉量が増え、代謝も改善しています。
2020年の研究において、子どもの場合も、口の中の炎症を減らすと体重や身長の伸びが回復したという報告があります(Silva et al.,)。
つまり、歯ぐきを治すことは、体の成長スイッチを再び入れることになるのです。
歯ぐきの健康は、成長の土台

歯ぐきは、骨や筋肉、ホルモン、免疫と深くつながっています。
炎症があれば、全身のバランスが崩れて、成長も老化も影響を受けます。
歯ぐきが赤い、出血しやすい、口臭が強い
そんな小さなサインを放っておくと、知らないうちに体の成長エネルギーが失われているかもしれません。
毎日の歯みがきや定期的な歯科検診は、単なる習慣ではなく、身体の炎症をリセットして、成長を守る行為になるのです。
まとめとして
歯ぐきを守ることは、未来の成長を守ること、そして、老化予防にも。
歯周病の炎症は、成長ホルモンを抑えて、骨の再生を遅らせ、身長や代謝の発達にブレーキをかけてしまいます。
つまり、歯ぐきの健康は成長の基礎であり、身長、体力、若さ、すべての土台となるのです。
歯を磨くことは、歯をきれいにするためだけではありません。
それは、自分の体の成長と再生を守るための、いちばん身近な医療行為といえるのです。
コラムはウエスト歯科クリニックと玉川中央歯科クリニックで、それぞれ異なる内容を掲載しています。ぜひ、もう一方のコラムもあわせてご覧ください。
参考文献
- Peres, M. A. et al. (2017). Caries Research, 51(6).
- Agarwal, V. et al. (2018). Community Dent Oral Epidemiol, 46(5).
- Silva, R. et al. (2020). J Clin Pediatr Dent, 44(3).
- Sharma, R. et al. (2019). J Clin Endocrinol Metab, 104(4).
- Yamazaki, K. et al. (2021). Gerodontology, 38(4).
- WHO. (2022). Global Oral Health Status Report.
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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