なぜ、マウスピースは長期間使うと良くないのか?
2025年10月10日
今回は、このテーマでお話しします。
なぜ、マウスピースは長期間使うと良くないのか?
歯科医が警鐘、便利さの裏に潜む重大なリスクがあります。
マウスピースは、使用する目的によって名称が違います。代表的なのが、ナイトガードや咬合スプリントですが、歯を守るためだから、使い続けても問題ないというのは、注意が必要です。怖いことに長く使い続けると逆効果になることもあるのです。そのコラムでは、そのリスクと対策をわかりやすく解説したいと思います。
はじめに
歯ぎしりや食いしばりは、就寝時のクセだから自分ではコントロールできないから、マウスピースを入れておけば安心、と考える人は少なくないと思います。確かに一時的には歯も守れますし、顎の痛みも軽くなるから、非常に便利な治療器具です。
ただし、ずっと長期間にわたって使っていると逆効果で悪影響が出ることがあるのをご存じでしょうか? このようなケースは、治療の現場でよく見かけるものですから、ご紹介します。
このコラムでは、なぜ、マウスピースの長期間の使用が問題になるのか、関連する論文ベースの研究を紹介しながらなるべくわかりやすくお話ししたいと思います。
噛み合わせのズレ?ゆっくり進むから気がつかない!
長期間、マウスピースをつけていると、歯が微妙に動いてズレてしまったり、上下の噛み合わせが不安定になることがあります。
スウェーデンのWidmalm(2004)の論文では、半年以上、変形した偏った形のスプリントを使うと、噛み合わせのズレが起こる可能性を指摘しています。つまり、知らないうちに元には戻せない、不可逆的なズレが積み重なる可能性があるといえるのです、
顎関節症への効果はどうなのか?
顎の痛みに効くから、とマウスピースを続ける人は多いのですが、実は、長く続けなくても改善するケースは多いです。
八谷ら(2023, JOP)のレビューでは、リバーシブルな治療で顎関節症の症状は大半が改善して長期的に噛み合わせを変える必要は低いと書かれています。
つまり、症状がとれた、痛みが落ち着いた後も習慣的に使い続けるのは、意味がないだけでなく、むしろ、逆効果の可能性もあるようです。
効果のピークは短期に出る?
オクルーザルスプリントは、短期的には筋肉の緊張を和らげたり痛みの軽減する効果が期待できますが、、システマティックレビュー(Planasら, 2022, PLOS ONE)には、長期的には他の保存的治療法と差がないということが発表されています。
つまり、使い方を間違えると全く意味のない気休めのような状態になってしまいますから、その治療を続けていいのか、定期的な見直しが重要になってきます、
口だけでなく、全身に及ぼす
咬合スプリントを半年間使用した患者で、視覚機能が改善したという研究結果もあります。(Khijmatgarら, 2025, BDJ Open)。
一見、これはプラスの要素ですが、噛み合わせが全身に影響を与える証拠友いける発表でした。。だからこそ長期使用の影響は予想以上に広範囲に及ぶ可能性があるので、長期に使用する場合は慎重に注意が必要です。
素材のプラスチックの影響はあるのか?
長時間口に入れるものですから、素材にも目を向けないといえません。最近、よく議論にあがるマイクロプラスチック、添加物の溶出についても議論が増えてきてます(TeethNightGuard.com, 2023)。
現時点では人体への影響は明確には確認されていませんが、長期間の使用により、素材が溶け出すとか、やはり、使い続ければリスクが顕著に現れるかもしれません。そのために、長期使用はさせるべきだと考えています。
患者さんがよく感じる不快感とは?
- 顎のだるさがマウスピースを使用することで逆に強くなる
- マウスピースの長期使用で、歯肉の炎症が悪化する
- マウスピースをいれたままだと、話しにくい。
- マウスピースを長期使用すると、噛む癖が慢性化して、唾液腺を刺激することで、唾液が増える
- マウスピースの素材のプラスチック特有の味
- 素材のプラスチックによるアレルギー反応
これらは違和感レベルですが、毎日の生活のクオリティの低下に一役、手を貸す存在となり、じわじわと不快感がましてくるのです。
短期的にはメリットがある?
そうですね。マウスピースの短期間の使用には確かなメリットがありますね。
2025年の研究(Gomesら, Applied Sciences)では、マウスピースの使用でブラキシズムや不安、不眠の改善が確認さたようです。
つまり、どんなものも同じですが、ルールを守って使えば効果が期待できますが、使いっぱなしはリスクしかないというものです。
まとめ:なぜ、長期間の使用がよくないのか
- 噛み合わせがズレて、変わってしまう危険性がある。
- 顎関節症治療では短期で改善、長期使用では効果は微妙。
- 噛み合わせは身体全身に影響することから、予想外のリスクもあるかも。
- マウスピースの素材に使われているプラスチックによる健康リスクの危険性
- 長期的なマウスピースの使用により、不快感が高くなり生活の質を下げる危険性
D r.Ryoからの提案:根本的な解決を目指す方法
ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。 内容を理解すると、自分は大丈夫なのか? と心配になった方もいると思います。
でも、ご案内ください。大切なのは、マウスピースを使い続けるという、マウスピースに依存するのではなく、定期的に、その治療が最善なのかを見直すことなのです。
ただし、本当の本質的な解決を目指すであれば、噛み合わせのズレという一部分だけに注目するのではなく、生活習慣・姿勢・呼吸・ストレス管理まで含めたトータルな視点での診察が欠かせません。
そのような方々のために、当院では、精密なマンツーマンでの特別な初診体験ができる[プレミアムコンサルテーション]を用意しています。必要に応じて、「トータルヘルスケアプログラム」や、それ以外の全身全体を見直すサポートもご提案しております。
マウスピースに頼るのではなく、依存から脱却して、未来の自分の健康を守るために、まず一度、噛み合わせが得意な歯科での診察がおススメです。
ウエスト歯科クリニックと玉川中央歯科クリニックでは、それぞれで異なる専門的なコラムを掲載しています。読み比べていただくことで、より深い理解に繋がりますから、ぜひ、もう一つのホームページもご覧になってください。
最後まで、読んでいただいてありがとうございました。
参考文献として
- Widmalm SE. Use and abuse of bite splints. J Prosthet Dent. 2004.
- Yatani H, et al. Occlusal therapy for TMD. JOP. 2023.
- Planas A, et al. Occlusal splints effectiveness in TMD. PLOS ONE. 2022.
- Khijmatgar S, et al. Occlusal splint and visual function. BDJ Open. 2025.
- Gomes M, et al. Miami-type splint for bruxism and sleep. Applied Sciences. 2025.
- com. Do dental night guards contain toxins? 2023.