オールオン4で20年以上もったケースがあるから大丈夫と言われました。それなら、大丈夫でしょうか?
2026年8月28日
オールオン4について相談をすると、よく、20年以上問題なく使えているケースがあります。だから大丈夫と説明されることがあります。
そう言われると、20年もっているなら、安心だと思ってしまいます。
また、その感覚は、とても自然なのものです。
ただ、ここで一度、立ち止まって考えてほしいことがあります。
それは、20年もった、という事実が、何を意味していて、何を意味していないのかということにあります。
20年以上もった、は事実?!

実は、20年以上トラブルなく経過したオールオン4の症例は、実際に存在します。
世界的にも、スウェーデンのヨーテボリ大学、ポルトガルのリスボン大学、ハーバード大学関連機関などから、10年、15年、20年といった長期経過を追った研究が報告されています。
問題は、年数だけのものではありません。
誰にとっての20年なのか?!
医学では、治療が安全、有効と言えるかどうかを、一部のうまくいった例だけで判断することはしないのです。
なぜなら、医療は平均的な人に、どれくらいの確率で、どんな問題が起きるかを扱う学問であるからです。
20年以上もった症例は、多くの場合、ある特徴がみられます。
例えば、咬合力が比較的穏やかだったとか、骨の質が良かったとか、設計が非常に慎重だったとか、定期的なメンテナンスが継続されていたとか、患者さんの協力度が高かったといった、多数の好条件のそろったケースである可能性が高いわけです。
つまり、20年もったという事実は、条件付きの話になるとご理解ください。
症例があるのと、保証できるは違う

ここで、整理させてください。
20年以上もった症例がある、ということと、20年以上もつと保証できるは、同意語ではありません。まったく別のものです。
医学的に言えば、前者は 症例報告、後者は 再現性のあるエビデンス が必要になるのです。
YouTubeや説明の場で語られる「20年問題なかった」という話は、ほとんどの場合、前者の話になります。
ただ、このことは価値のない話ではありませんが、治療選択の決定打にはなりえないのです。
生体力学の問題は壊れる前に進行する

オールオン4を生体力学の視点で見ると、問題は何年もったか、よりも前に起きます。
天然歯は親知らずを入れずに通常は28本あり、それぞれが歯根膜というクッションを介して、力を分散しています。
一方、オールオン4は、上下8本のインプラントが、歯根膜というクッションなしで全ての力を受け止めています。
これは、繊細な話になるのですが、壊れるか壊れないかの話ではなく、どれだけ無理をしながら耐えているかの話になります。
考えられるのは、骨の中での微細なダメージ、ネジやフレームへの疲労、噛み合わせのわずかなズレ。これらは、痛みもなく、音もなく静かに進んでいきます。
つまり、20年壊れなかったからといって、20年無理がなかったとは限らないのです。
学術論文は、慎重な言葉を使います

世界的な大学の論文を見てみると、20年近い長期フォローの研究であっても、適切な症例選択が前提であり、機械的合併症は一定数起こるとされ、骨吸収の進行には注意が必要といった 条件付きの結論 が必ず添えられています。
ですから、20年大丈夫だったから安心という言い切りは、学術論文では、ほぼ使われません。
その理由としては、研究者ほど断定を避けるという医療の特徴でもあるのです。
大丈夫と言われたらどう受け取ればいいのか

20年以上もったケースがあるから大丈夫ですよ、と言われたとき、次のように考えてみてください。
その20年症例は、自分と条件が同じなのかどうか、また、咬合力、骨の質、年齢は近いのかどうか、その20年の間、どんなメンテナンスが必要だったのかどうか、トラブルが“ゼロ”だったのかどうか、でしょうか。
ここまで説明してくれるドクターであれび、その言葉は、かなり信頼できます。
逆に、条件の話がなく、大丈夫とだけ言われる場合は、少し慎重になってよいかもと思います。
結論として

勘違いしないようにしてほしいのですが、20年以上もったケースがある。
これは、希望にはなりますが、あなたにとっての安心材料であっても保証ではありません。
本当に大切なのは、その治療が、あなたの身体の中で、あなたの20年に耐えられる設計かどうかなのです。
それを生体力学、時間軸、将来の選択肢まで含めて説明してくれるドクターなのか?
その治療を選ぶ前に、そのことこそが最重要になると私は考えています。
最後に
医療の世界では、うまくいった話ほど、魅力的に聞こえます。
本当に信頼できるドクターは、うまくいかなかった可能性にも、きちんと触れています。
20年もったから大丈夫。その言葉を、どういう条件の話なのか問い返してみるのも治療内容以上に大切なのです。
それは、ドクターを疑うことではなく、自分の体を大切にする、正しい姿勢になると考えています。
コラムはウエスト歯科クリニックと玉川中央歯科クリニックで、それぞれ異なる内容を掲載しています。ぜひ、もう一方のコラムもあわせてご覧ください。
参考文献
- Brånemark P-I et al.
Osseointegration and its experimental background
University of Gothenburg(ヨーテボリ大学) - Malo P, Rangert B, Nobre M.
All-on-4 concept: A clinical report on the immediate function
Lisbon University / Nobel Biocare - Papaspyridakos P et al.
Complications and survival rates of full-arch implant-supported prostheses
Harvard School of Dental Medicine 関連 - International Journal of Implant Dentistry
Long-term outcomes of the All-on-4 treatment concept
Springer Nature - Frontiers in Bioengineering and Biotechnology
Biomechanical comparison of All-on-4 versus All-on-5 using finite element analysis - Dental Materials Journal(日本歯科材料学会)
Mechanical properties of periodontal ligament and stress distribution
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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