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イタリアと日本、どちらが歯周病になる?

2026年6月19日

結論をいいます。

統計で見ても、文化で見ても、歯周病になりやすいのは日本人です。

イタリアの成人で中等度以上の歯周病を持つ人は約38%(ISS, 2023)です。

一方、日本では55〜60%(厚労省, 2023)に達しています。

同じ先進国でありながら、この差を生むのは歯磨きの仕方や、回数ではありません。

イタリア人は人生を楽しみゆるやかに生きることで、自然に歯ぐきを守るのに対して、日本人は頑張りすぎることで、知らず知らず歯ぐきをすり減らしているというのが現状としてあります。

1.イタリアでは

イタリア

イタリア人では、朝はエスプレッソ、昼のパスタ、夕暮れのアペリティーヴォで締めくくらる食事。

どの時間にも味わう余白的な時間があります。

このゆるやかな生活のリズムが、心身の緊張を和らげて、体内の炎症反応を抑えていると考えられます。

健康への考え方もバランスが基本となります。

何かを我慢したり、完璧を求めたりせず、ほどほどにして人生を楽しむことが健康の秘訣だとされるのです。

その考え方は歯のケアにも通じており、歯を磨くより、歯を大切に扱う文化が根づいています。

イタリアの歯周病学会(SIdP, 2022)によると、成人の65%が年1回以上の定期検診を受けて、歯科衛生士による歯石除去というスケーリングも保険で一般的に行われています。

また、イタリアでは「笑顔」が日常のマナーであり、人と話すときに自然に歯を見せるため、歯ぐきの健康が社会的印象に直結するのです。

つまり、見られる文化が、そのままケアする文化を育てている、といえます。

2.日本では

日本

日本の衛生意識は高く、歯磨き習慣も世界トップクラスになります。

しかし、悪くなってから行く人が多く、定期的なケアがまだまだ制度としては不十分です。

2023年の厚生労働省の調査では、年1回以上の歯科検診を受けている人は約40%です。

また、歯石除去を定期的に行う人は3割未満にとどまり、。35歳以上の6割が歯周ポケット4mm以上の炎症を抱えており、さらに40代では重度歯周炎が2割を超えています(日本歯周病学会, 2022)。

これは「不衛生」だからではなく、むしろ日本人は真面目すぎるのが原因だと思われます。

痛みがあっても、仕事が落ち着いたら、我慢できるうちは、と先送りにする傾向が強くあり、我慢の美徳が、静かに進行する病を見逃してしまうのです。

結果的に、日本は歯を磨いているのに、歯ぐきを守れない傾向が強くなっているのです。

3.食文化のちがい

オリーブオイルをかける様子

実は、食事には、歯ぐきの運命を分ける要因があります。

イタリアの食卓では、硬めのパン、噛み応えのある肉や野菜が常識です。

オリーブオイル、トマト、魚介類に含まれる抗酸化物質やオメガ3脂肪酸が、炎症を抑える効果があるのです。

実際、地中海食を続ける人は歯周病の進行が遅いという報告もあるのです(Marconcini et al., 2021)。

それに対して、日本の食卓は柔らかいものがれ中心です。

白米、うどん、豆腐、パン、スイーツなどなど、これらは、咀嚼回数が少なく食べることができるため、唾液腺が刺激されずに、唾液の分泌が減りやすいのです。

さらに“ながら食べ”や間食が多く、口の中が酸性状態のままになりやすいわけです。

イタリア人は食事に区切りという時間的な余白があり、日本人は食事を摂り続けるイメージで途切れ無い傾向が高いです。

この食べる時間の違いも、歯ぐきの健康に影響しています。

4.メンタルと社会

よく笑い食事を楽しむイタリアの人々

イタリア人は感情表現が豊かで、よく話し、よく笑い、ストレスを溜めない特徴があります。

心理学者ルッツィ(Luzzi, 2020)は、感情を表す文化は免疫の柔軟性を高める、と指摘しています。

つまり、ストレスを外に出すことが、炎症を防ぐことに貢献するのです。

対して日本は、感情を抑えて調和を保つ社会ですから、無意識の歯ぎしりや食いしばりも多く、ストレスによる炎症が慢性化しやすいのです。

日本歯科医師会(2021)によると、職業ストレスが高い人は、低い人より1.7倍歯周病が悪化しやすい、と示されています。

イタリアの明るさは、歯ぐきをケアして、日本の静けさは、歯ぐきに負荷をかけ続けるのです。

5.宗教と身体観

カトリックのイメージ

カトリック文化のイタリアでは、身体は神からの贈り物。

完璧ではなくても、大切に扱うものという意識があるといわれています。

癒すことが人生の一部であり、ケアをすることが自然な行為なのです。

日本では、身体は自分で律するもの、という考えも根付いています。

努力で整え、体調を崩すことは弱さとされやすいのです。

そのため、歯ぐきの不調があったとしても、もっと歯ブラシ。頑張ればよかったと自責が生まれる傾向があります。

つまり、イタリアは癒しの文化、日本は忍耐の文化といえます。

その差が、歯周病への心理的距離を決定づけているのです。

結論として

イタリア人の歯ぐきが強いのは、生き方のバランスによるところが大きいのです。

食事を楽しみ、感情を表に出し、休息を取る。そのすべてが、自然に身体の炎症を鎮めているのです。

それに対して、日本人は誠実で、努力家で、清潔なのですぎ、頑張りすぎて休まない傾向があります。

その緊張が、歯ぐきをじわじわと疲弊させていくのです。

歯周病は、歯の病気であると同時に、社会のリズムの病と言い換えることができます。

速く急いで生きる国ほど、歯ぐきは疲れる傾向があり、ゆっくり味わう国ほど、歯ぐきは穏やかに回復するのです。

イタリアのスマイルにこだわる姿勢は歯ぐきを癒し、日本の静かな努力や負荷は歯ぐきを痛めつけるのです。

どちらがいいというのでは無いが、歯ぐきの健康という一点では、ゆるやかに生きるイタリアに軍配が上がるということです。

コラムは ウエスト歯科クリニック玉川中央歯科クリニック で、それぞれ異なる内容を掲載しています。ぜひ、もう一方のコラムもあわせてご覧ください。

参考文献(引用一覧)

  1. Istituto Superiore di Sanità. Oral Health of Italian Adults, 2023.
  2. SIdP. Rapporto Annuale sulla Salute Parodontale, 2022.
  3. Ministry of Health, Labour and Welfare (Japan). Survey of Dental Diseases, 2023.
  4. Japanese Society of Periodontology. National Periodontal Health Survey, 2022.
  5. World Health Organization. Global Oral Health Status Report, 2023.
  6. Marconcini, S. et al. Clin Oral Investig, 2021.
  7. Luzzi, R. et al. J Psychosom Res, 2020.
  8. Japan Dental Association. Work Stress and Oral Health Study, 2021.

この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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