落ちないお腹の脂肪を落とす方法
2026年3月3日
みなさんこんにちは、ドクターリョです。論文で学ぶシリーズ、今回のテーマはこちらです。
落ちないお腹の脂肪を落とす方法
ダイエットしてもなかなか痩せない、運動してもお腹の脂肪だけ残る。
こうした悩みは多くの人に共通しています。通常、年齢とともに代謝が落ちて、特にお腹まわりに脂肪がつきやすくなります。しかし、私が治療した患者さんからは、治療後体重が減って、お腹の脂肪がはじめて落ちた、今まで色んなダイエットしていてもダメだったのに。との声をいただくことがあります。これは単なる偶然ではなく、国内外の研究で物を粉砕する咀嚼能力と肥満・内臓脂肪との相関関係が明らかにされつつあるのです。
本コラムは、お腹の脂肪がなぜ落ちないのか、そして脂肪を減らすにはどうすればよいのかを、国内外の論文を引用しながら、解説していきます。
お腹の脂肪が落ちにくい理由

お腹の脂肪には皮下脂肪と内臓脂肪の二種類があります。皮下脂肪は皮膚の下につく脂肪で、比較的エネルギー不足で減りやすいのに対し、内臓脂肪は代謝やホルモンに強く関わり、生活習慣病のリスクとして注目されています。
日本の国立健康・栄養研究所の報告では、加齢、運動不足、食生活の乱れによって特に内臓脂肪は蓄積しやすく、一度ついてしまうとなかなか落ちにくいことが知られています(厚生労働省, 2020)。
さらに2012年の海外のコホート研究でも、内臓脂肪は食習慣やストレスの影響を受けやすく、皮下脂肪と比べて、頑固な脂肪、であると指摘されています(Després, Nature Reviews Cardiology,)。
咀嚼と肥満の科学的関係

物を粉砕する咀嚼の回数と、肥満の関係は相関関係にある可能性があります。つまり、よく噛んで食べることは、ただの健康法ではなく、科学的に体重コントロールに関係する行為であるといえるのです。
2013年の東京医科歯科大学の研究では、物を粉砕する咀嚼回数が多い人ほど肥満度(BMI)が低い傾向にあり、特に内臓脂肪面積との逆の相関関係が確認されました(山本ら, 日公衛誌, 2013)。
さらに、2006年の九州大学の疫学調査では、早食いの人は肥満率が高い、という結果が示されており、不十分な咀嚼が肥満を誘因させることが分かっています(Otsuka et al., Obesity, 2006)。
また、2011年のアメリカ、ハーバード大学の研究では、物を粉砕する咀嚼を増やすことで食事量が自然に減って、満腹感が高まり、体重増加を防ぐ効果があると述べています(Li et al., Am J Clin Nutr, 2011)。
物の粉砕と、代謝との関係
噛む回数が増えると、食べるスピードが遅くなるだけでなく、ホルモンや代謝にも影響するといわれています。
レプチンなどの満腹ホルモンの分泌増加
また、よく噛むことで消化管ホルモンが刺激され、満腹感を感じやすくなります。2009年の東京大学の研究では、咀嚼が腸管ホルモンGLP-1の分泌を高めることが確認されました(Kokkinos et al., J Clin Endocrinol Metab, 2009)。
インスリン感受性の改善
早食いは血糖値の急上昇を招いて、脂肪の蓄積を助長するのですが、反対に、噛む回数を増やすと、血糖値の上昇が緩やかになって、脂肪がつきにくくなることが示されています(Tanihara et al., J Epidemiol, 2011)。
交感神経の活性化
物を粉砕する咀嚼の刺激が交感神経を介してエネルギー消費を高める効果があると報告されています(Sato et al., Physiol Behav, 2012)。
これらの作用のため、噛むこと、が脂肪の蓄積を防いで、落ちにくいお腹の脂肪を減らす助けになるのです。
臨床現場での実感

実際に臨床現場でも、患者さんから、よく噛めるようになったら太りにくくなった、落ちなかったお腹の脂肪が落ちた、との声をいただくことがあります。これは上記の研究結果と合致しており、主観的体験ではなく科学的根拠に裏付けられた現象といえると思います。
特に、噛む力、が弱い高齢者や、矯正後に咀嚼能力が改善した患者は、体に変化が見られるケースが多く、咀嚼能力が肥満予防の重要な要因であることを示しています。
運動・食事制限との違い

脂肪減少には、運動やカロリー制限は重要です。ただ、実際のところ、運動だけだと内臓脂肪の減少は限定的であることが多く、リバウンドも起きやすいのです。2018年のアメリカの大規模研究では、食事と運動を組み合わせることが、最も体重減少に成功したと報告されています(Jakicic et al., JAMA, 2018)。
ただし、同じ食事内容でも、噛む回数が違うだけで吸収や代謝が変わり、結果として脂肪のつき方が変わりますから、補足しておきます。
咀嚼能力を高める

咀嚼能力を高めるにはどうすればよいのでしょうか。
- 一口を小さくして、30回以上噛む習慣をつける
- 硬めの食品を取り入れる
根菜、玄米、ナッツなど自然に噛む回数が増える食材を取り入れる - 食環境を整える
早食いを防ぐ工夫として、スマホやテレビを見ながらの食事をしない - 歯科的アプローチ
歯が無かったり、不安定な噛み合わせは、咀嚼効率を落とします。歯科治療することで、自然と肥満リスクが減ることが報告されています(Morita et al., J Dent Res, 2015)。
トータルヘルスケアの視点

重要なのは、物を粉砕する咀嚼は、全身の健康と深くつながっているということです。噛み合わせや歯の状態、顎の関節の機能は姿勢や体のバランスにも影響するのです。
トータルヘルスケアプログラム® のように、全身の歪みや噛み合わせを精密に分析して、バランスを整える新しいアプローチは、肥満や生活習慣病予防の観点からも意義があると考えています。つまり、食事制限や運動を頑張るのではなく、体の使い方や噛む力を改善することで、自然に太りにくくなり、落ちなかったお腹の脂肪が落ちるという変化が得られるのです。
結論として
お腹の脂肪が落ちにくいのは、代謝、ホルモン、生活習慣などが複雑に絡み合っているためですが、近年の研究は物を粉砕する咀嚼 がそのカギを握っており、よく噛むことで満腹感が高まり、血糖値の上昇が緩やかになって、代謝が改善されて、結果として内臓脂肪の減少につながることがわかっています。
臨床現場でも、咀嚼能力を高めた患者さんから、太りにくくなった、お腹の脂肪が落ちた、との声が多数寄せられています。これは科学的根拠と一致するものであり、食事制限、運動、咀嚼習慣の改善が、本当にお腹の脂肪を落とすための現実的な方法といえると考えています。
最後まで、読んでいただきありがとうございました。
咀嚼の可能性、夢のある、新しい健康の切り口だったこではないでしようか?
そのコラムを通じて、今までの常識にとらわれずに、新しい常識を他のコラムでも確認してみてください。
統括院長 Dr.Ryo
コラムは、ウエスト歯科クリニック、と、玉川中央歯科クリニック、の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
- 山本ら. 「咀嚼回数と肥満の関連」日本公衆衛生雑誌, 2013.
- Otsuka R, et al. Eating fast leads to obesity. Obesity, 2006.
- Li J, et al. Chewing and satiety. Am J Clin Nutr, 2011.
- Kokkinos A, et al. Chewing and GLP-1 secretion. J Clin Endocrinol Metab, 2009.
- Tanihara S, et al. Chewing and diabetes risk. J Epidemiol, 2011.
- Sato Y, et al. Chewing and energy expenditure. Physiol Behav, 2012.
- Després JP. Body fat distribution and cardiovascular risk. Nat Rev Cardiol, 2012.
- Morita T, et al. Tooth loss, mastication, and obesity. J Dent Res, 2015.
- Jakicic JM, et al. Effect of diet and physical activity on weight loss. JAMA, 2018.
- Humphrey JD, et al. Abdominal obesity and lifestyle. Lancet, 2019.




