歳をとっても、スムーズに話し続けるために 本当に大切なこと
2026年8月21日
結論から言います。
あなたに合った噛み合わせをつくり、維持することが、歳を重ねてもスムーズに話し続けるため、最も重要となります。噛み合わせは食べ物をすりつぶすための仕組みだけではなく、発話、脳の働き、姿勢、呼吸、表情、思考のスピードにまで影響を及ぼします。
言葉がスムーズに出やすい人と出にくい人の差は、必ずしも語彙力や経験値だけなく、口腔機能がどれだけその人にとって自然に、ストレスなく使える状態にあるかが関係しているのです。
噛み合わせと脳・発話の関係

近年、咀嚼という行為が前頭前野や海馬を刺激して、記憶、注意、判断力を支える働きをすることは、既に多くの研究が示しています。
しかし、ただ噛めばよいのではなく、その人にとって適切な噛み方で噛めているかどうかで結果が大きく違ってきます。
これは発話についても同様であり、噛み合わせがすこしズレただけでも舌、頬、下顎の動きを微妙に乱して、言葉の明瞭さを損なうことがあるのです。そのことに本人は気づかないレベルでも、周囲は少し聞き取りにくいと感じ始めることがあるというわけです。
噛むという動作の全身連動性

なぜ噛み合わせが認知機能や話す力にそこまで影響するのか。その理由は、噛むという行為がどれだけ体中の連携で成り立っているかを理解する必要があります。
噛む動作は、歯と顎の関節だけでなく、舌、頬、口輪筋、首、姿勢を保つ筋肉、さらには呼吸を司る筋肉まで連動して行われます。
万一、噛み合わせが少しでもズレていると、そのズレを補うために筋肉が日頃必要のない余計な働きをしてしまい、発話動作そのものに負担がかかってしまいます。
特に、噛み合わせのズレによって舌の位置が変化して、子音の明瞭さに影響することがあります。
噛み合わせが整ったときに起こる変化
一方、噛み合わせが整って、顎が本来あるべき位置で機能し始めると、発話の滑らかさが変わるのです。
舌の可動域が自然になり、声の響きも変化して、長く話しても疲れにくくなります。それだけでなく、噛み合わせの最適化が脳の血流と前頭前野の活動を改善し、認知機能の低下リスクを抑える可能性があるという研究結果が複数報告されています。つまり、話す力だけでなく考える力まで含めた総合的な能力を、噛み合わせが下支えしているといえるのです。
研究結果から見える噛み合わせの重要性

ある研究では、高齢者の噛む力の低下が海馬体積の縮小と関連して、認知機能の低下リスクを高める可能性が示されました。それだけでなく、咀嚼による適切な脳への刺激が脳の健康維持に役立つという点は多くの研究で共通しています。また別の研究では、噛み合わせが不安定な患者は舌圧や発話明瞭度に変化が見られて、治療後に改善が見られたという報告もあります。
ここで注目なのが、ガム咀嚼を通じて前頭前野の血流が増加するという研究はよく知られているのですが、その効果が適切な噛み合わせを持つ群でより強く現れたという結果があるのです。
噛み合わせをあなたに合った適正な状態に整えることは、より多くの副産物である効果を押し上げることが確認されています。
まとめると、
咀嚼能力低下は海馬の萎縮、認知機能低下と関連する可能性があります。
噛み合わせのズレは舌運動と発話明瞭度の低下と関連して、治療後には改善が見られます。
物を粉砕する咀嚼は前頭前野の血流を増加させるが、適切な咬合状態にある群ほど効果が大きいのです。
あなたに合った噛み合わせという考え方

こうした研究から、歳をとってもスムーズに話し続けるためには、噛み合わせを単に治すのではなく、あなたに合った噛み合わせを再構築する視点が不可欠だと分かります。
噛み合わせは人それぞれに個性があり固有のものです。
例えば、歯の生え方、顎の大きさ、咀嚼筋の癖、幼少期の呼吸習慣、姿勢、生活習慣などによって微妙に異なるわけです。だからこそ万人に共通の正しい噛み合わせというものは存在せず、唯一存在するのは、あなたの身体にとって自然で機能的に最も優れた噛み合わせであるのです。
トータルヘルスケアプログラム®のアプローチ

ここで、私たちが行っているトータルヘルスケアプログラム®のアプローチは、この“ あなた自身の最適解を導き出すという考え方に基づいているのです。
歯だけを見るのではなく、顎関節、筋肉、姿勢、呼吸、発話時の動きまで含めて多角的に分析して、その人にとって最も無理なく機能する顎位と噛み合わせを見つけます。100時間を超える精密分析を行うのは、身体全体をシステムとして理解し、その人本来の働きを取り戻すためなのです。
噛み合わせが整えば、日常の話す、食べる、考える、という、ごく普通の行動が驚くほど滑らかになってきます。
それは決して大げさなことではなく、多くの患者が体感している変化になります。
将来、言葉が出にくい、会話が続かない、いった悩みを避けるための最も現実的で効果的な方法のひとつが、実は噛み合わせを整えるのではなく、あなたに合った噛み合わせに整えるのとになるのです。
コラムは ウエスト歯科クリニック と 玉川中央歯科クリニック で、それぞれ異なる内容を掲載しています。ぜひ、もう一方のコラムもあわせてご覧ください。
引用論文一覧
- Bergenholtz, A. et al. (2019). Association between masticatory function and hippocampal volume in older adults. Journal of Oral Rehabilitation.
- Sakai, T. et al. (2017). Relationship between occlusion and tongue pressure / speech clarity. Journal of Prosthodontic Research.
- Hirano, Y. et al. (2013). Chewing and prefrontal cortex activation. Neuroscience Letters.
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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