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イギリス人と日本人、虫歯が多いのは?

2026年4月3日

こんにちは、ドクターリヨウです。論文で学ぶシリーズ、今回のテーマはこちらです。

イギリス人と日本人、虫歯が多いのは?

同じ先進国でも、口の中は違います。

イギリスと日本、どちらも経済的に豊かな国で、医療制度も整っていますが、虫歯の発生率や歯の残存状況には、差があるのです。

統計的に見ると、日本人のほうが虫歯経験が多いのです。

その原因は、アメリカとの比較の時のように、ケア不足、砂糖の摂りすぎ、なのでしょうか?

本ブログでは、イギリスと日本の文化を比較して、なぜ、虫歯の多さに差が生まれるのかを探っていきます。最後まで読んでくださると嬉しいです。

イギリス

イギリス国旗

イギリスでは、歯の健康は、個人だけでなく社会全体の責任として位置づけられているようです。

この考え方の基礎にあるのが、国民皆保険制度NHS(National Health Service)です。

NHSは1948年に創設されて、通常の医療だけでなく歯科も公共の健康の一部として扱われてきました。

虫歯予防のための学校教育や地域プログラムが充実しており、子どもへのフッ化物塗布は全国的に推奨されているのです。

それだけではなく、水道水への*水道水にフッ素を添加する処置も行われており、地域によっては飲料水自体が虫歯を防ぐ働きを持っているといえるのです。

2023年の英国政府の報告書『Delivering Better Oral Health』(2023)では、これらの予防対策が国民の虫歯率を長期的に減少させたと報告されています。

2023年のイギリス政府統計では、11歳児の虫歯経験率は16%台にとどまり、成人の未治療う蝕率も30%前後まで低下しています(UK Health Security Agency, 2023)。

こうした成果は、医療技術の問題だけではなく、歯を守ることは社会の義務という理念が、教育、政策、家庭生活にまで浸透していることの結果といえると思います。

日本

日本国旗

日本にも高い歯科医療技術がありますが、予防よりも治療に力をいれている傾向が強い文化があります。

歯医者は、痛くなったら行く場所であって、健康なときに通うという発想はまだまだ、一般的とはいえません。

戦後、日本では公衆衛生の中心が感染症対策、栄養改善に置かれたこともあり、口の中の健康は個人の管理と考えられてきた傾向があります。

また、水道水へのフッ素添加は薬物に対する安全性への懸念と、市民の反発により導入されずに、現在でもフッ化物の利用は主に歯磨き粉や学校の洗口活動に限定されているのが現状です。

2024年のBMC Public Health(2024)の研究では、フッ素洗口を導入している自治体の子どもたちは、導入していない地域よりも虫歯が少ないことが示されているのですが、こうした取り組みは地域ごとにばらつきがあって全国的な制度としては確立していません。

そのためか、日本では予防文化が広がりにくく、歯の健康が、個人の努力に依存するようになっています。

少し乱暴に比較するのであれば、イギリスが公的に守られる歯、であるのであれば、日本は自己責任で守る歯、ということになると思います。

食習慣の文化

糖分のイメージ

実は、イギリスと日本では、砂糖の摂取量自体には大きな差があるといわれています。

国連FAOのデータによれば、イギリス人の1日あたり砂糖摂取量はおよそ100グラム、日本人はおよそ60グラム前後である。

砂糖の摂取量が多いイギリスのほうが、日本よりも虫歯が少ないのです。

それは、なぜなのでしょうか?

その理由は、砂糖の摂り方にあると考えられます。

イギリスでは、甘いデザートを食事の一部として一度に摂る習慣があります。紅茶に砂糖を入れる習慣もあるのですが、だらだらと甘いものを食べ続ける間食は少ないのです。

日本は、どうかというと、おやつや菓子パン、甘い飲み物を一日に何度も摂る、ダラダラ食べ文化がまだまだ根強いのです。

この摂取頻度の多さが、口内環境を長時間酸性に保って虫歯を進行させやすくしているといえます。

WHO(2015)は、砂糖の摂取量よりも摂取頻度がう蝕に影響すると報告していますから、日本の食習慣は虫歯にとって繁殖するには良い環境といえるわけです。

社会的プレッシャーと歯の見せ方

白い歯を見せて笑う女性

歯への意識を左右するのは、医療制度だけではなく、社会的見られ方も大きな要因となります。

イギリスでは、歯の美しさが清潔感や信頼の象徴とされる社会です。

職場の面接でも白い歯が良い印象を与えて、子どもが矯正をするのは、将来への投資、と考えられているのです。

歯並びや歯の色のケアは、文化的には常識的な文化なのにたいして、日本では、清潔感は重視されるものの、歯並びや色を社会的評価とする感覚はあまりありません。

まだまだ、痛くなければ放っておく傾向が強くて、美しさよりも食べられれば良いという見た目よりも機能を重んじる文化が残っています。

つまり、イギリスでは歯は社会的ステータス、日本では身体の一部という違いがあると考えられます。

この文化的な感覚の違いが、予防への投資意識を左右している統括いえるのです。

教育と親の意識

ブラッシング指導の様子

イギリスの学校では、早い段階からブラッシング指導が行われ、保護者にも、家庭での仕上げ磨きや、定期検診の重要性が繰り返し教えられています。

公的機関が制作した動画やパンフレットも学校から配布されて、子どもと親が一緒に歯の予防を学ぶ環境が整っているのです。

日本でも学校健診が行われていますが、その後のフォローアップは家庭に任されることが多く、歯科医院への受診率は地域差が非常に大きいのです。

家庭によっては、永久歯になれば大丈夫、乳歯は抜けるから放っといて良い、といった認識が残っている場合もあります。

歯を守る知識の伝え方が、イギリスのほうが構造的に整っていると言えるのではないかと考えています。

結論

イギリスの方が日本よりも虫歯の少ない国です。その差は、医療技術の差ではなく、文化としての歯の守り方が違うためにおきます。

イギリスでは、歯は社会で守る仕組みがあり、教育、制度、家庭が連携しているのに対して、日本では、歯は個人の努力に委ねられて、痛みが出てから行動するという文化が根づいているのです。

もし日本がイギリスのように、歯を守る文化へ変化できれば、虫歯は減ると思うのですが、そのためには、文化としての意識改革で最も重要な要素となると考えています。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

虫歯を通じて、外国文化と触れ合い、両国の理解がより深まると良いてすよね。

統括院長 Dr.Ryo

コラムは ウエスト歯科クリニック玉川中央歯科クリニック で、それぞれ異なる内容を掲載しています。ぜひ、もう一方のコラムもあわせてご覧ください。

参考文献(引用一覧)

  1. Public Health England. Delivering Better Oral Health: An Evidence-Based Toolkit for Prevention. GOV.UK, 2023.
  2. UK Health Security Agency. Oral Health Survey of Children in Year 6 (2023). GOV.UK, 2023.
  3. The Guardian. “Fluoride will be added to UK drinking water to cut tooth decay.” The Guardian, 2021.
  4. World Health Organization. Sugars and Dental Caries: WHO Technical Note. Geneva: WHO, 2015.
  5. Matsumoto, H. et al. “School-based fluoride mouth-rinse program and children’s oral health in Japan.” BMC Public Health, 2024.
  6. Ministry of Health, Labour and Welfare (Japan). Survey of Dental Diseases, 2023.
  7. Li, Z. et al. “Global, regional, and national burden of dental caries, 1990–2021.” BMC Oral Health, 2025.
  8. Takahashi, N., Nyvad, B. “Ecological approach to dental caries prevention.” J Dent Res, 2011.
  9. FAO. Food Balance Sheets: Sugar Consumption by Country, 2023.

この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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