イギリスと日本、歯周病になるのはどちら?
2026年6月23日
結論をいいます
統計などの数字だけ見れば、日本の方が歯周病になりやすいです。
イギリスでは成人の約41〜45%、日本では55〜60%が中等度以上の歯周病を抱えていると示されています(UKHSA・厚生労働省, 2023)。
どちらの国も衛生意識が高く、医療制度も整っているのですが、それでも差が生まれるのは、健康をどう扱うかという、つまり文化の違いが考えられます。
イギリスでは健康を語ることが社会の常識であるのに対して、日本では健康を黙って支えることが美徳とされる傾向がみられます。
この語る文化と沈黙の文化の差が、歯ぐきの運命を左右しているといっても、過言ではありません。
1.イギリスでは

イギリスでは、健康は個人の努力ではなく社会の責任と考えられています。
国民保健サービスである、NHSはその象徴であり、歯科診療も公共の健康として整備されています。
歯石除去や歯周検査は保険でカバーされており、学校では歯磨き指導や食習慣教育が行われています。
歯を守ることは社会への礼儀、というふうな考えを教えられるのです。
さらにそれだけでなく、歯の問題はオープンに語られます。
テレビや新聞では、ガムヘルスウィーク(Gum Health Week)のような啓発キャンペーンが行われ、歯ぐきの出血や口臭の話題も日本よりもタブーではありません。
問題を言葉にする文化が、早期発見と予防を後押ししているのです。
イギリスでは、歯周病は恥ずかしいものではなく、誰もが向き合わないといけない健康の課題として社会に受け入れられているのです。
2.日本では

日本では、健康とは努力と我慢で支えるものという位置付けです。
少しぐらいの痛みなら我慢して、忙しさを理由に先送りする人もいます、また、そのようなことが日常にあるわけです。
また、歯ぐきの腫れや出血も、たいしたことないと見過ごされがちです。
2023年の厚生労働省の調査では、40代以降の6割以上が歯周炎を抱えているにもかかわらず、その多くが自覚症状はないと答えています。
さらに、日本の保険制度は治療には手厚く、予防には弱い傾向があります。
最近、少し手直しされてきてはいますが、まだまだ、その傾向は強いのです。
悪くなってから通えば安く治せる、そんな構造が受診の遅れを生んでいるのだと考えられます。
そしてもうひとつの壁が、口の話を人前でしない文化というのが、他の国よりも残っています。
歯ぐきが腫れた、口臭が気になる、といった話題は、どこか恥ずかしいものとして避けられてきた傾向があり、この沈黙する文化こそが、歯周病を進行させているといえるのです。
3.健康観の違い

イギリスでは、健康は管理すべき義務という扱いです。
歯科検診を怠ることは、自分を大切にしないことであり、社会へのマナー違反にもつながるのです。
日本では、健康は控えめに維持するものというイメージです。
人前で体のことを話すのは慎みを欠くとされる文化がまだ残っており、人知れず静かに治すことが立派とされてきたのです。
イギリスが管理の道徳で健康を守るのに対し、日本は謙遜の道徳で健康を語るわけです。
その倫理観の差が、歯周病の早期発見にも影響していると思われます。
4.食文化

意外かもしれませんが、食べ物の硬さも、歯ぐきの健康に関係してきます。
イギリスの朝食はベーコンやトーストなど硬い食材が多く、しっかり噛む習慣が自然に歯ぐきを鍛えるのです。
紅茶に含まれるカテキン類のポリフェノールは抗菌作用があり、歯周病菌の増殖を抑えることが報告されている(Steinberg et al., 2018)。
日本を見ていきます。
現代食は柔らかく白米、うどん、パン、スイーツなどなど、昔の玄米を食べていた頃よりも噛む回数が減り、その結果、唾液の分泌が少なくなっているのです。
実は、唾液の抗菌力が弱まれば、炎症は進みやすくなるのです。
イギリスに戻ります。
イギリスは、食事時間が比較的一定であり、ティータイムが生活のリズムを整えているといえます。
日本では食事時間が不規則な方が多く、そのために間食が増えて、口の中が長時間酸性状態になりやすいのです。
このだらだら食べる、この習慣が歯ぐきを疲弊させるのです。
5.社会の仕組み

イギリスの保険制度NHSは、所得者に関係なく平等に歯周病治療を受けられる制度です。
予防指導も地域で行われ、衛生士が学校や家庭を訪問するケースも多いのです。
日本も誰でも歯科に行ける点では平等ですが、イギリスと違うのは、定期メンテナンスは個人の意思に任されているということです。
そのため、仕事や家事が忙しい人ほど、受診が後回しになる傾向が強いのです。
つまり、イギリスでは制度が予防を助けて、日本では努力が予防を支える、イメージなのです。
ただ、努力はとても立派なのですが、支えなしでは長く続けるのは難しいという側面があります。
6.心と体

歯周病は、ストレスや孤独など心の状態とも密接に関係している。
イギリスでは、メンタルヘルスの話題が社会に浸透しており、心の健康を保つことが身体を守ることが広く知られています。
孤独や不安は炎症を悪化させる、という科学的事実が、教育の中にも組み込まれているのです。
日本では、心の不調を口にすることがまだ一般的ではなく、頑張れば何とかなるという思考が強くて、ストレスを抱えたまま仕事を続ける人が多いのです。
その結果、睡眠不足や食いしばりが増えて歯ぐきへの負担が蓄積していくわけです。
イギリスは語ることで炎症を和らげ、日本は耐えることで炎症を深めています。
結論として
イギリスでは、歯周病は社会の会話の中にあるのに対して、日本では、歯周病は本人の努力の中にあるのです。
つまり、イギリスは対話で防ぎ、日本は我慢で支えます。
どちらが良いというわけではありませんが、沈黙が長く続くほど、歯ぐきは疲れやすくなるりますから、日本の方が歯周病で悩まされやすいのです。
歯周病を防ぐ第一歩は、歯を磨くことではなく、自分の身体について、色々と語ることなのかもしれません。
イギリスは、声をあげて健康を守る国であり、日本は、黙って健康を支える国であるのです。
沈黙があまり長く続くと、日本の歯ぐきは常にダメージを受けやすい環境にさらされることになるのです。
コラムは ウエスト歯科クリニック と 玉川中央歯科クリニック で、それぞれ異なる内容を掲載しています。ぜひ、もう一方のコラムもあわせてご覧ください。
参考文献(引用一覧)
- UK Health Security Agency (UKHSA). Adult Oral Health Survey 2023.
- Public Health England. Delivering Better Oral Health: An Evidence-Based Toolkit for Prevention, 2023.
- World Health Organization. Global Oral Health Status Report, 2023.
- Ministry of Health, Labour and Welfare (Japan). Survey of Dental Diseases, 2023.
- Japanese Society of Periodontology. National Periodontal Health Survey, 2022.
- Steinberg, D. et al. J Periodontol, 2018.
- Petersen, P. E. The global burden of periodontal disease, J Clin Periodontol, 2019.
- British Dental Association (BDA). NHS Dental Statistics for England 2022–2023.
- Japan Dental Association. Lifestyle and Periodontal Disease in Modern Japan, 2022.
- Sanz, M. et al. Periodontitis and systemic health: Consensus report, J Clin Periodontol, 2020.
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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