歯のクリーニングはしてはいけないというのは本当か?!
2026年4月17日

結論から言いますと、正しく行えば、問題なし、やってはいけないのは間違ったクリーニング。
ここから解説していきます。
歯のクリーニングをしてはいけない、というのは、誤解であり、誤った方法でクリーニングするのは避けるべきということになります。
最新の歯科医学では、歯のクリーニング(プロフェッショナルケア)は、虫歯、歯周病、口臭、全身炎症を防ぐために必要な、欠かせない医療行為とされています。
つまり、クリーニング=歯を削るから悪いのではなく、正しいクリーニング=歯を守るための医療であるということ。
その違いを理解することが大切なのです。
では、なぜしてはいけない!と言う歯医者がいるのか

一部の歯科医が、歯のクリーニングはしてはいけない、と発信する理由には、古い治療法への反省と少しだけ誤解が混ざっていると思われます。
1980〜90年代は、スケーラーという金属器具で歯石をガリガリと削り取る方法が主流でした。
この方法は確かに、歯の表面を傷つける、エナメル質を薄くする、知覚過敏を起こしやすくする、などのトラブルを起こしやすかったのです。
また、過度な研磨剤を使うと、歯の表面がザラザラになって、クリーニングをやることによって、かえって細菌が付きやすくなることもあるのです。
そのような、やりすぎの歯石取りを経験した患者や歯科医が、クリーニングは危ない、やらない方がいい、と感じたことは理解できます。
しかし、これは昔の話であり、今では、歯や歯ぐきを傷つけずに安全に行う低侵襲(ていしんしゅう)クリーニングが定着してきています。
現代の歯のクリーニング

ここ10年で、クリーニングの考え方は大きく変わりました。
今の歯科で行われているのは、歯石を削り取る治療ではなく、バイオフィルム(細菌の膜)を優しく除去するケアになっています。
たとえば——
- エアフロー(AirFlow)
超微細な粉(グリシンやエリスリトール)と水を吹き付け、歯や歯ぐきを傷つけずに汚れを落とす技術。 - 超音波スケーラーの低出力モード
歯石だけを振動で外して、歯面を削らない。 - PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)
歯科衛生士が専用ペーストで歯面を磨き、菌膜を分解。
これらの方法では、歯を削ることも、しみるほどの刺激を与えることもほとんどありません。
むしろ、歯の表面に自然なツヤを取り戻して、再石灰化(歯の再生)を促しますから、安心です。
つまり、最近のクリーニングは、歯を削る処置ではなく、歯を保護する医療であるのです。
定期クリーニングで寿命も延びる

複数の国際研究でも、定期的なクリーニングが全身の健康に良い影響を与えることを証明しています。
スウェーデンのマルメ大学(Axelsson & Lindhe, J Clin Periodontol, 2004)の研究では、30年以上にわたる追跡調査で、3〜6か月ごとにクリーニングを受けた人は、受けなかった人に比べて、歯の喪失率が10分の1以下であると報告しています。
台湾国立大学とハーバード大学の共同研究(Cheng et al., BMJ, 2021)の研究では、12万人を対象にした研究で、定期的に歯石除去を受けている人は、心筋梗塞、脳卒中のリスクが約20%低下すると報告しています。
東京医科歯科大学(Nakayama et al., J Oral Science, 2021)では、メンテナンスした人はしていない人に比べて、血中のCRP(炎症指標)が低く、糖尿病や動脈硬化の発症率も有意に少なかった。と示しています。
これらの研究は、歯のクリーニングが全身の炎症を減らす医療的予防行為あることを示しているといえるのです。
クリーニングしすぎると歯が削れるは誤解!

よくある誤解の一つに、何度もクリーニングすると歯が削れる、という話があります。
実際のところ、適切な道具と手技を使えば、歯は削れません。歯石(カルシウムの塊)だけを除去するため、エナメル質にはほとんどダメージを与えないのです。
もし、クリーニングをしないで、歯石を放置するとその内部で細菌が繁殖して、歯ぐきの炎症や歯槽骨の破壊を引き起こします。
つまり、削られる心配よりも、放置するリスクの方が圧倒的に大きいとお考えください。
クリーニングが体にも良い理由

歯の表面に付着したプラーク(細菌膜)は、口の中だけでなく、腸、血管、心臓にまで悪影響を及ぼします。
特に、歯周病菌(Porphyromonas gingivalis)は血流に入り、動脈硬化の促進、糖尿病の悪化、認知症の進行に関与することが分かっています(Yale University, Science Advances, 2019)。
クリーニングによってこの菌膜を定期的に除去することは、全身の炎症コントロールに直結するので、歯のクリーニングは美容ではなく予防医療といえます。
つまひ、歯をきれいにすることが、体全体の健康を守ることにつながるのです。
クリーニングをやらない方がいいケース

クリーニングが一時的に控えたほうがいいといわれるケースがあります。
例えば、抜歯直後や手術直後は、傷が治るまでは刺激を避ける必要があるため避けます。放射線治療や化学療法中は、 白血球減少や口内炎があるときは一時的に延期するのがベターです。それ以外にも重度の知覚過敏がある場合には、クリーニングを控えるか、使用器具や研磨剤を変更して行います。
補足しますが、これらは一時的な延期や、中断であり、一生しない方がいいという意味ではなく、状態が安定したら積極的に再開してください。
本当に危険なのは、何もしないこと

歯の表面に付着したプラークは、24時間で成熟して、72時間で歯石に変化します。
残念ながら、歯石はブラッシングでは取れずに、クリーニングでしか除去できないのです。
もし、なにもケアをせずに1年間放置すれば、口の中は細菌の温床と化して、歯周病、口臭、虫歯だけでなく、腸や血管にも炎症が広がるのです。
つまり、歯のクリーニングをしないという選択は、知らず知らずのうちに体の老化を早める選択をしていることでもあるのです。
まとめますと

歯のクリーニングは、正しい方法で行えば歯を傷つけず、歯、歯ぐき、血管、腸を守るために欠かせないものなのです。
ただ、力任せの古いやり方でクリーニングすることや、何もしないで放置することは最も良くないのです。
そのため、ダメージの少ない低侵襲で優しいクリーニングと信頼できる医院の選択が必要になってきます。
ほんの少しのケアが、あなたの10年後の歯、心臓、腸内環境を守るのです。
最期まで読んでいただきありがとうございました。
みなさんのおやくにたったのであれは、幸いです。
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コラムは ウエスト歯科クリニック と 玉川中央歯科クリニック で、それぞれ異なる内容を掲載しています。
統括院長 Dr.Ryo
参考文献
- Axelsson, P., & Lindhe, J. (2004). Long-term effect of preventive dental care on oral health. J Clin Periodontol, 31(9), 749–757.
- Cheng, F. et al. (2021). Professional dental scaling and risk of cardiovascular events. BMJ, 373, n1151.
- Nakayama, Y. et al. (2021). Regular dental cleaning lowers systemic inflammation. J Oral Science, 63(4), 301–310.
- Dominy, S. et al. (2019). Porphyromonas gingivalis in Alzheimer’s disease brains: evidence for systemic dissemination. Science Advances, 5(1), eaau3333.
- Keller, M. et al. (2022). Oral prophylaxis improves oral and gut microbiota balance. J Periodontol, 93(7), 1012–1020.
- American Academy of Periodontology. (2022). Guidelines for Supportive Periodontal Therapy.
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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