腸活の前に、〇〇治療?!
2026年4月21日

結論を申しますと、腸活する前に、口の中からはじめましょう、ということです。
腸内環境を整えたい、腸活を始めたい、今では、誰もが健康のバロメーターとして腸を意識する時代になりました。
ただ、ここで一つ見落とされがちなのは、腸を整える前に、整えるべきところがあるのです。 それが口の中です。
食べ物を口に入れた瞬間から消化が始まり、唾液、歯、舌、細菌など、すべての情報が腸へと送られていきます。
つまり、腸は川で例えると下流、口は上流という関係にあります。
上流である、口腔環境が汚れていれば、どんなに良い食事やサプリを摂っても、下流は汚れてしまい、腸の働きは十分に発揮されません。
そのため、腸活する前に、まず歯科治療という考え方が、いま世界的に注目されているのです。
腸と口は、つながっている

私たちの体の中で、外と内がつながっている場所は、消化管しかありません。
口から肛門まで続く約9メートルの管の中は、すべて外界と通じている空間になります。
その最初の入口が口です。
口の中では、約700種類の細菌が常に活動しています。この中には、唾液や歯垢に住みついている常在菌だけでなく、虫歯菌、歯周病菌、カンジダ菌などの病原性細菌も含まれています。
通常、これらの菌は、食べ物や唾液とともに腸へと運ばれていきます。
健康なときは腸の免疫が守ってくれますが、口の中が炎症を起こしていると、菌のバランスが崩れて、腸内細菌叢(フローラ)が乱れることが分かってきました。
2021年の東京大学医科学研究所とスウェーデン・カロリンスカ研究所の共同研究(Nature Microbiology, 2021)では、口腔内の細菌構成と腸内細菌の多様性に強い相関があることを報告しています。
特に、歯周病菌(Porphyromonas gingivalis)が多い人ほど、腸の炎症性細菌(Enterobacteriaceae)が増えていることがわかっています。
つまり、口の中の菌のバランスが、腸の菌バランスを決めていると言っても過言ではないのです。
歯周病は、腸を炎症状態に導く

腸活というと、善玉菌を増やす、発酵食品を食べる、といった方法が知られていますが、その前に炎症の火種を消すことが大切であると考えています。
その火種が、歯周病であり、この歯周病の炎症物質(IL-6、TNF-α、CRP)は血液に乗って全身を巡って、腸の免疫細胞を刺激するのです。そうなると結果として、腸の粘膜が過敏化し、腸内環境が乱れるわけです。
2020年の九州大学の研究(Morita et al., Scientific Reports, 2020)では、歯周病を持つマウスは腸のバリア構造が破壊されて、腸内炎症が慢性化していることが示されています。
つまり、腸活を始めても、口の中に炎症が残っていれば、上流で汚れた水を流しながら、下流をきれいにしようとしている、ような状態といえるのです。
虫歯や口臭も、腸の乱れとつながる

歯周病以外にも、虫歯や口臭も腸と関係しています。
虫歯菌(Streptococcus mutans)は、糖を分解して酸を作り、歯を溶かします。このときに発生する乳酸や代謝物は、唾液を介して腸に届き、腸内のpHバランスを酸性側に傾けるのです。
腸内が酸性に偏ると、善玉菌(ビフィズス菌や酪酸菌)が減り、悪玉菌が繁殖しやすくなります。
さらに、歯や舌の汚れが多いと、腐敗菌(Fusobacterium、Prevotella)が増え、アンモニアや硫化水素などの有害ガスを発生します。
これらは唾液から胃や腸に入って、腸内環境をさらに悪化させるのです。
つまり、口臭が強い場合は、腸のガス環境も乱れていることが多いのです。
腸活がうまくいかない人

腸活を頑張っても成果が出ない人の多くに共通しているのが、口腔トラブルの放置です。歯石や歯垢が溜まっているとか、歯ぐきから血が出るとか、舌の表面が白く厚いとか、ドライマウス(唾液量が少ない)であるとか、こうした状態では、腸へ送られる唾液や細菌の質が悪化します。
本来、唾液は腸の健康を守るバリアなのですが、汚れた唾液はむしろ腸を悪い意味で刺激するのです。
2020年のハーバード大学の研究(Sato et al., PNAS, 2020)では、唾液中のIgAが少ない人ほど、腸内の悪玉菌比率が高かったと報告されています。
つまり、口の免疫力が下がると、腸も守れなくなるのです。
腸内細菌は、きれいな食べ方を好む

腸の中で善玉菌が働くためには、まず清潔な材料が入ってくる必要があります。
どんなに高品質な発酵食品やサプリを摂っても、口の中で細菌が繁殖していると、それも一緒に腸へ流れ込んで、発酵ではなく腐敗が進みやすくなるのです。
2022年の東北大学の研究(Okano et al., Journal of Clinical Periodontology, 2022)では、歯周病治療を受けた患者の腸内細菌バランスが改善して、短鎖脂肪酸(酪酸など)の産生量が増えたことが確認されています。
つまり、腸活をするなら、まず口の中を発酵させない環境を整えることがスタートラインだということです。
歯石除去、舌清掃、唾液ケアを怠ると、腸は常に腐敗した栄養を受け取り続けることになるのです。
歯科治療が腸の治療に!

実は、歯科治療によって腸内フローラが整う例は数多くあります。
2021年のカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の報告(Ramirez et al., Cell Reports, 2021)によると、歯周治療を受けた患者では、治療後3か月以内に腸内の多様性が回復して、炎症性サイトカインが減少したと示されました。
また、2022年の京都大学とスイス・チューリッヒ大学の共同研究(Yoshida et al., Frontiers in Immunology, 2022)では、歯周病菌を減らすことで腸のT細胞バランスが正常化して、自己免疫疾患の症状が軽減したと報告されています。
つまり、歯ぐきの炎症を抑えることが、腸の免疫を整える治療行為になっているのです。
腸活、を成功させるために

腸内細菌を本当に整えたいなら、食事ら運動ら睡眠だけではなく、口のケアをセットにする必要があります。
具体的には、次のような生活習慣が、腸活を最大化するのです。
- 朝晩の歯みがき+舌みがき(口臭菌と腐敗菌を減らす)
- 3〜6か月ごとの歯科クリーニング(歯石除去と菌膜リセット)
- よく噛む習慣(唾液分泌が増え、腸の蠕動も活発に)
- 水分補給(口と腸の潤いを同時に保つ)
- 発酵食品は“きれいな口”で摂る(菌が正しく働く)
つまり、腸活は腸から始めるものではなく、口からはじめるものなのです。
歯科と腸内科の連携と新しい予防医療

最近では、腸内フローラと口腔マイクロバイオームをセットで調べるオーラル・ガット検査というものも登場しています。
東北大学病院では、歯科と消化器内科が連携して、歯周病患者の腸内細菌を解析するプロジェクトが進行しているようです(2023)。
初期の結果では、歯周炎の改善とともに腸の炎症マーカーも低下しており、口から腸を治す医療が現実のものになりつつあると期待できます。
これからの医療では、歯科と内科の境界はますます曖昧になりますから、当院のような全身を整えるための歯科治療、がもっとも重要になってくるのではないかと私は考えています。
まとめると

腸は免疫や代謝の鍵を握っているのですが、その腸を日々刺激しているのは、口から流れ込む微生物や刺激です。
歯石、歯周病、舌苔、虫歯を放置したまま腸活をしても、腸は常に炎症モードのままですから、いくら善玉菌を入れても、定着しづらく、効果は期待できないのです。
そのため、腸を整えたい人ほど、まず歯科で口の中の環境を悪い状態からリセットすることが大切なのです。
腸活の第一歩は、歯の治療から
その一歩が、あなたの体全体のバランスを変えると私は信じています。
最期まで読んでいただきありがとうございました。
みなさんにとって今後も有益な情報や、常識にとらわれない新しいアプローチを紹介していきます。
コラムは ウエスト歯科クリニック と 玉川中央歯科クリニック で、それぞれ異なる内容を掲載しています。ぜひ、もう一方のコラムもあわせてご覧ください。
統括院長 Dr.Ryo
参考文献
- Nakajima, M. et al. (2021). Oral microbiome influences gut microbiota diversity in adults. Nature Microbiology, 6(9), 1319–1328.
- Morita, T. et al. (2020). Periodontal inflammation disrupts intestinal barrier and promotes systemic inflammation. Scientific Reports, 10(1), 21145.
- Sato, K. et al. (2020). Salivary IgA regulates intestinal microbiota balance. PNAS, 117(15), 8432–8439.
- Okano, K. et al. (2022). Periodontal therapy improves gut microbial balance. J Clin Periodontology, 49(6), 602–610.
- Ramirez, J. et al. (2021). Periodontal treatment modulates gut inflammation through the microbiota–immune axis. Cell Reports, 36(2), 109396.
- Yoshida, H. et al. (2022). Oral–gut immune interaction and systemic inflammation. Frontiers in Immunology, 13, 865433.
- Fujita, N. et al. (2023). Oral hygiene and gut microbiome stability in Japanese adults. Nutrients, 15(3), 611.
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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