オリンピックで成果を出す方法パート②
2026年4月24日

前回の①が好評でしたから、新たにパート2をつくりました。少し切り口をかえていますから、最後までお読みください。
先に結論から申しますと、噛み合わせの安定が身体能力を最大化させて、潜在能力を引き出すということです。
オリンピックでの勝敗ラインは100分の1秒、あるいはごくわずかな差になります。
最新の研究では、噛み合わせのわずかなアンバランスが、身体全体の姿勢のコントロール、筋肉、神経の反応にまで影響を及ぼすことがわかってきました。
つまり、歯ならびや顎の関節を正しく整えることで、神経筋の協調性、バランス能力、集中力、回復力のすべて底上げされるわけです。
これが、オリンピックレベルの選手には必要な、見えないパフォーマンスアップの方法なのです。
噛み合わせと身体バランスの関係

噛み合わせは、頭蓋骨、頸椎、骨盤まで全身に影響します。
咀嚼筋の緊張や顎の位置は、頸部の筋肉のバランスや体幹の安定に大きく関係しており、その影響は、神経筋制御(ニューロマスキュラー・コーディネーション)を介して運動精度を変えることが確認されています。
ドイツのゲーテ大学フランクフルト(Goethe University Frankfurt)の研究では、下顎と位置を変えるだけで ランニング時の左右対称性が改善したことが報告されています(Maurer et al., PLOS ONE, 2015)。
インスブルック大学の報告(Julià-Sánchez et al., Frontiers in Physiology, 2019)では、咬合を変えることで動的バランス(Star Excursion Balance Test)の成績が変化しています。
これらは、噛み合わせが神経筋制御を介して全身の安定性に影響するという結論を示しています。
噛み合わせの安定とパフォーマンス向上

東京医科歯科大学(TMDU)
東京医科歯科大学の研究チームは、運動中の噛み込む咬合力をリアルタイムで測定できる、マウスガード型ウェアラブルセンサを開発して、スポーツパフォーマンスとの関係を解析しています。
それによると初期報告では、競技中の咬みしめ強度がパフォーマンスと関連しうる傾向を示しました(科研費・2017–2021)。
北海道大学
北海道大学の研究グループは、物を粉砕する咀嚼中の頭部、体幹、足底の動きを同時計測することにより、咀嚼によって座位姿勢の安定性が高まることを報告しています(科研費・2015–2017)。
咀嚼は、姿勢を微調整する中枢神経反射を刺激していることが示しています。
日本歯科大学(新潟)
日本歯科大学では、咬合接触を均等化したマウスガードが姿勢の安定性や俊敏性に影響を及ぼすことを検証しました。
特にハンドボールやトランポリンの選手では、俊敏性、滞空時間、着地安定性が改善しました(科研費・2018–2021)。
この結果はエリート選手ほど効果が大きく、神経筋制御の最適化がパフォーマンスの再現性を高めると考えられます。
広島大学
広島大学の高齢者を対象とした研究では、噛み合わせの崩壊と平衡機能(片脚立位時間)低下が比例することが報告されています。
噛み合わせが身体のバランスに与える影響が、加齢層でも明確に確認される点は、口腔と全身機能の普遍的な関連を示す重要な証拠であると考えられます(吉田光義ほか, 老年歯科, 2021)。
海外の主要研究が導く結論

イタリアのミラノ大学の研究(Limonta et al., J Strength & Conditioning Research, 2018)では、スプリント装着時に上肢の等尺性収縮パフォーマンスと筋電図指標が変化しています。
この結果は、噛み合わせの位置の違いが筋出力のタイミングに影響する可能性を示しています。
また、2021年の国際レビュー(IJERPH)では、複数のスポーツで咬合スプリントの影響をまとめており咬合スプリントの効果は個人差が大きいものの、条件によって明らかな改善が見られる、と結論づけています。
さらに、2024年の系統的レビュー(Quintessence)では、12研究中4研究が有意なパフォーマンス向上を報告しており、強い確証はまだないが、安全で、ポジティブ効果がある、と整理されています。
つまり、誰でも必ず向上する、という話ではなく、その人に合った最適な噛み合わせの状態を探ることで身体能力を最大限引き出せるという、個別の最適化が大切ということなのです。
神経生理学的メカニズム

噛み合わせが安定すると、咀嚼筋を支配する三叉神経核の出力が均等化します。
この神経核は延髄、小脳、中脳と密接に結合していて、姿勢反射、筋の緊張、眼球運動、呼吸リズムにまで影響を与えています。
また、噛み合わせの安定は交感神経の過剰な緊張を抑えて、副交感神経活動を高める効果があると報告されており、集中力、回復力、睡眠の質など、アスリートに不可欠なパフォーマンスの改善にもつながるのです。
これは筋肉の問題ではなく、脳神経系のバランスをとる、いわゆるチューニングの問題といえます。
トータルヘルスケアプログラム®の実践的意義

医療法人社団 聖和厚生会が提供する「トータルヘルスケアプログラム®」では、
この神経、筋、骨格の統合的観点に立ち、2D/3D分析を用いた精密評価を行っています。
プログラムのデータでは、咬合バランスを調整した後、筋活動の左右差が減少して、重心のぶれが低下し、呼吸の深さが増すことで、肩・腰・膝など運動連鎖部位の動きが滑らかになるケースが多数確認されています。
この結果は、国内外の学術研究で示された知見を、実際の医療の現場で再現したケーススタディといえると考えています。
まとめとして

オリンピック選手がほんのわずかな差を縮めるために、血液や酸素を研究するように、現代のトップアスリートは噛み合わせという、新しいアプローチから全身を最適化させることに目を向けています。
噛み合わせの安定は、姿勢の軸を整え、神経反射を最適化し、筋の出力を効率化して自律神経のバランスを調整するのです。
このことは、全身機能の統合再調整と言えると思います。
そして、トータルヘルスケアプログラム®は、その理論を実際に見える化して、再現可能にした先進的なアプローチであるのです。
もしオリンピックで成果を出す方法を一言で言うならば、噛み合わせを整えて、身体の本質的なバランスを最適化することになります。
コラムは ウエスト歯科クリニック と 玉川中央歯科クリニック で、それぞれ異なる内容を掲載しています。ぜひ、もう一方のコラムもあわせてご覧ください。
参考文献・引用一覧
- Maurer C, et al. PLOS ONE, 2015, Goethe University Frankfurt/Main — 下顎位操作でランニングの左右対称性が改善。
- Julià-Sánchez S, et al. Frontiers in Physiology, 2019, Univ. Innsbruck — 咬合条件により動的バランスが有意に変化。
- Limonta E, et al. J Strength & Conditioning Research, 2018, Univ. Milan — スプリント装着時に筋電・力学的指標が変化。
- Systematic Review, International Journal of Environmental Research and Public Health (IJERPH), 2021 — 効果は個人差ありだが、条件依存的に改善を確認。
- Systematic Review, Quintessence, 2024 — 有意効果は限定的だが、安全でポジティブな条件効果を確認。
- 吉田光義ほか, 老年歯科, 2021, 広島大学 — 咬合崩壊と平衡機能低下の相関。
- 科研費(東京医科歯科大学, 2017–2021)— 運動中の咬合力センサ開発とパフォーマンス解析。
- 科研費(北海道大学, 2015–2017)— 咀嚼による座位姿勢安定化の検証。
- 科研費(日本歯科大学, 2018–2021)— 均等化マウスガードで姿勢・俊敏性・滞空時間が向上。
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
▶︎Dr. RyoのYouTubeはこちら
▶︎Dr. Ryoのプロフィール




