歯医者に行く前に気をつけること。
2026年5月29日

結論から言います。
歯医者に行く前に大切なのことは、空腹すぎない状態でいかないこと、もし飲んでいる薬があれば薬を勝手にやめないこと、体調や服薬を正確に伝えることです。
そして可能であれば、不安を減らす準備をすること。
これらに気をつけることで、治療の安全性も快適さも驚くほど変わります。
絶食するべきか、食べていいのか。

意外と多くの患者さんから聞かれるのが、食べて行っていいの?という質問です。
全身麻酔や静脈鎮静を受けるなら、絶食は必須になります。
米国麻酔科学会(ASA)の指針では固形物は6時間、透明な飲み物は2時間前まで、と定めているのですが、通常の歯科医院でおこなう局所麻酔の治療では軽く食べておく方が安全だと思います。
なぜなら、空腹すぎると低血糖や血圧の変動を起こしやすくて、めまいなどの体調不良が起きる可能性が高くなり危険なのです。
参考にしていただきたいのは、イギリスのケンブリッジ大学病院でも局所麻酔の前に絶食は不要と明記しているのです。
つまり、鎮静や全麻なら絶食。局麻だけなら軽食をとるのがベターです。
このルールを知っていると、治療当日の安心度が違ってきます。
「薬は服用中止」ではなく、申告

内服薬で、特に、抗凝固薬・抗血小板薬などの血液をサラサラにする薬を服用している人の場合、抜歯などの血が出る観血的処置があると薬を止めた方がいいのでは、と思いがちですが、アメリカ歯科医師会(ADA)は多くのケースで継続したまま、局所止血で対応可能と明言しています。
心疾患や人工弁の既往がある人も注意が必要です。
感染性心内膜炎の予防抗菌薬は、アメリカ心臓協会(AHA)の最新指針で、ごく限られた高リスク者のみが対象と示しています。
つまり、念のための抗生剤は原則不要というのが世界的な主流なのです。
薬の服用を中止するかどうかではなく、どんな薬を、どの量で、いつ飲んだかを正確に伝えることが、非常に重要であり、ある意味、命を守る基本てあることを忘れてはなりません。
骨粗鬆症・がん治療薬を服用している人へ。

歯科治療で特に気をつける必要があるのが、ビスホスホネート系やデノスマブなどの薬を服用している人です。
これらは、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)という副作用のリスクがあり、米国口腔外科学会(AAOMS)は、抜歯などの侵襲的処置前に必ず申告をするべきである、と強く推奨しています。
では、薬をやめれば安全になるのでは?という考えも浮かんできますが、リスクは投与期間や全身状態によって変わるため、主治医と歯科医の連携が欠かせませんと考えています。
術前うがいと喫煙・飲酒

口の中を整えることも忘れてはいけません。
クロルヘキシジンなどの殺菌性洗口液で20〜30秒うがいを予めしておくと、術後の炎症や感染のリスクを下げるという研究結果もあります。(Springer 2025年、四重盲検パイロットRCT)
また、喫煙や飲酒は治癒スピードを遅らせるといわれています。
喫煙者は、ドライソケットなどの抜歯後の合併症を起こしやすく、インプラント治療の後の骨結合にも悪影響を与えると、多くの研究が示されています。
最低でも、24時間、理想は48〜72時間前から禁煙が望ましいといわれています。(NHS・JRPMS 2025レビューより)
当日のコンディションと血圧の管理

今日は少し緊張してる、そう感じるのは自然なことですから、問題ないのですが、血圧が180/110mmHg以上なら治療を延期するのが安全とされいます。
160/100mmHgを超える場合も慎重な判断が必要であるとレビューでは紹介させています。(JADAレビューによる実務的基準)
睡眠不足、空腹も血圧変動の原因にことから、治療の前夜は早めに休み、朝は軽く食べて治療に出かける。
実は、これがいちばん簡単で効果的な予防策ともいえるのです。
不安をやわらげるために。

歯医者が怖い、けれど、不安を軽くする工夫は科学的にも効果があることがわかっています。
たとえば、音楽療法です。
MDPI『Children』(2025)や『Frontiers in Psychiatry』(2024)のメタ解析では、音楽が小児の歯科不安を有意に軽減したと報告されています。
大人にも同様の効果が見られますから、好きな音楽をイヤホンで聴きながら待合室で過ごすのはおすすめです。
もうひとつ大切なのが、合図を決めておくことでしょうか。
もし、歯科医師から何も言われずに、治療ご開始されそうになったら、手を上げたら一度止めてください、と伝えておくというものです。
このことだけで、自分でコントロールできる、という安心感が生まれますから、比較的快適な治療を受けることができると思います。
準備しておくもの。

診察券や保険証、お薬手帳、アレルギー情報。
例えば、東京医科歯科大学の初診案内でも、これらが安全管理のために必須だとされています。
さらに、鎮静や麻酔を受ける場合は、送迎者の確保も大切だと考えています。
なぜなら、治療の当日は眠気やふらつきが残ることがあるため、迎えを頼む、帰りの交通手段を決めておく、これも治療を受ける時に非常に重要であり、ある意味、これらも治療の一部と考えておくのがいいと思います。
ひと工夫。

5分早く到着して深呼吸をする、前夜に質問したい内容をメモとして作っておく、治療後の食事や鎮痛薬を準備しておくことも役にたつと思います。
NHSのガイドによると、局所麻酔後は熱い食べ物や硬いものは避けるのが安全とおります。
麻酔させているので、感覚が鈍くなりますから、食事後に火傷になっていることがよくあります。
また、食物だとしっかり噛まないとと噛んでいても、実は食べ物ではなく、自分自身の頬の内側を噛んでいるということも頻繁に起こります。
これら参考にほんの少しの注意や、工夫が、あなたを守るのです。
結論として、十分な準備は恐れを減らす

歯科治療で大切なのは、行き届いた準備です。
鎮静・全麻なら絶食、局麻なら軽食。薬は止めずに申告する。高リスク者のみ抗菌薬を服用。術前うがいと禁煙などを意識するだけで、治療はより安全に進むのです。
歯科治療には、十分な準備をしてから行く、それが、理想であると考えています。
コラムは ウエスト歯科クリニック と 玉川中央歯科クリニック で、それぞれ異なる内容を掲載しています。ぜひ、もう一方のコラムもあわせてご覧ください。
参考文献
- American Society of Anesthesiologists (ASA). Practice Guidelines for Preoperative Fasting
- European Society of Anaesthesiology & Intensive Care (ESAIC). Perioperative Fasting in Adults and Children
- Cambridge University Hospitals NHS. Preparing for your Appointment for Local Anaesthetic
- ADA. Oral Anticoagulant and Antiplatelet Medications and Dental Procedures
- AHA. Prevention of Infective Endocarditis – Wallet Card
- AAOMS. Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw – 2022 Update
- Springer (2025). Preoperative Chlorhexidine Mouth Rinse RCT
- JRPMS (2025). Smoking and Delayed Healing after Tooth Extraction
- JADA. Blood Pressure Thresholds in Dental Practice
- MDPI / Frontiers. Music Therapy for Dental Anxiety
- 東京医科歯科大学 歯系診療部門「初めて来院する方へ」
- NHS. After Dental Extractions under Local Anaesthetic
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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