保険の白い歯でも、良いのでは?
2026年8月24日
噛む力、消化、腸内環境までを含めて考察します。
保険の白い歯でも問題ないですよね。
臨床の現場で、このような質問をされることは少なくありません。
見た目は白くてセラミックと変わらないように見えますし、費用もかなり抑えられます。確かに、それで問題ないように思えそうです。
しかし、保険の白い歯をいれてから、
「しっかり噛めていない気がする」
「なんとなく、食後に胃が重い」
「気のせいか、便秘がちになった」
といった、歯とは一見関係なさそうな不調を訴える人もいます。
保険の白い歯は本当に問題ないのか?
ここでは、噛む機能と消化、腸内環境の関係から、少し丁寧に考察していきます。
保険の白い歯とは何か

一般に保険の白い歯と呼ばれるものの多くは、コンポジットレジン、硬質レジン前装冠といった樹脂系の材料です。
これらは比較的柔らかく、加工しやすいのですが、一方で、摩耗しやすく、長期的な形態安定性を考えると、あまり期待できません。
特に奥歯に使用した場合、噛む面がすり減りやすく、本来必要な噛み切るという歯の形が作りにくいといった特徴があります。
その結果、噛めているようで、実は噛み切れていない状態が起こりやすくなるのです。
また、無理に噛み締めの荷重をかけると、強度が不足することから、破損や破折が起こることがあることから、もともと、噛み合わせは甘く調整することが一般的となります。
噛み切れないと、何が起こるのか

食事において重要なのは、単に噛む回数ではありません。
食べ物を適切な大きさまで噛み切り、細かく粉砕して唾液と十分に混ぜることが、消化の第一歩になるのです。
国内外の研究では、咀嚼機能が低下すると、胃や腸への負担が増えることが報告されています。
噛み切れない状態では、どうしても甘噛みになりやすく、あるいは十分に噛めないまま飲み込んでしまうのです。
その結果、大きな食塊がそのまま胃に送られて、そうなると胃酸や消化酵素で処理しきれないいった状況が生じやすくなります。
胃への負担が、連鎖的に起こす問題

胃は本来、ある程度細かくなった食べ物を消化することを前提で働いています。
胃に、噛み切れないまま飲み込まれた食べ物が続くと、胃は消化をするために過剰に働かざるをえなくなります。
その結果、胃もたれ、胃の不快感、胃粘膜の荒れといった症状が出やすくなるのです。
咀嚼不足と胃機能低下の関連を示めす研究は複数あり、噛む機能の低下が上部消化管症状と関係すると報告されています。
胃で処理しきれないないと、腸へ送られる

胃で十分に消化されなかった食べ物は、そのまま腸へ送られます。
ここで問題になるのが、未消化物が腸に長くとどまることなのです。
腸は、栄養を吸収する場所であるのですが、未消化の食物が増えると、腸の蠕動運動が乱れやすくなり、ガスが発生しやすくなり、便が硬くなって便秘につながりやすくなります。
腸内細菌への影響も
未消化物が過剰に腸に届くと、特定の菌だけが増えやすくなり、腸内環境のバランスが崩れやすくなる可能性があります。
その結果、便秘や下痢を繰り返したり、お腹が張りやすくなり、全身の不調につながる、ということが考えられるのです。
保険の歯が悪いのではない

ここで誤解してはいけないのは、保険の白い歯そのものが絶対に悪いわけではありません。
問題は、噛み切る形が十分に与えられているのか、奥歯としての機能を十分に果たしてはいるのか、その人の噛み方や生活に合っているのか、という点にあります。
保険診療の枠内では、時間や材料、設計にかなりの制限があり、どうしても最低限の機能しか期待できないのが現実です。
噛めない状態は、本人が気づきにくい

問題なのは、噛めていない状態でも、人は意外と普通に食事ができてしまうことなのです。
痛みがなければ、噛めていると錯覚してしまうのですが、噛めている、と噛み切れているは、まったく別なのです。
その小さな差が、胃の不調、腸のトラブル、便秘を引き起こす可能性を高めてしまいます。
まとめとして
保険の白い歯で問題が出ないという人も、もちろんいます。
しかし、歯とは関係ないところで、胃もたれが続く、便秘になりやすい、食後の不快感が取れないといった症状がでてくる場合があるのです。
もしこのような症状が出ている場合は、噛む機能という視点を一度見直してみる必要があると考えています。
歯は、見た目の問題ではなく、消化を始めるスタートラインであり、その先の胃や腸、さらには全身の調子にも影響を与えるのです。
保険の白い歯でも大丈夫か?という問いに正確に答えるとすれば、その人が噛んでいると感じるという感覚ではなく、本当に噛み切れている状態かどうかで判断するべきであると考えています。
コラムは ウエスト歯科クリニック と 玉川中央歯科クリニック で、それぞれ異なる内容を掲載しています。ぜひ、もう一方のコラムもあわせてご覧ください。
参考文献(抜粋)
- Miura H et al.
Relationship between masticatory function and digestive symptoms - Yamamoto T et al.
Masticatory performance and gastrointestinal health - Sheiham A, Steele JG.
Does the condition of the mouth and teeth affect dietary intake and nutrition? - 平井敏博ほか
咀嚼機能低下が全身機能に及ぼす影響に関する研究
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
▶︎Dr. RyoのYouTubeはこちら
▶︎Dr. Ryoのプロフィール




